見出し画像

鳥獣戯画ノリ #毎週ショートショートnote

「ぎゃー!」

 目眩がしてぼーっとしていたところに、悲鳴が飛び込んできて目が覚めた。悲鳴が聞こえた方に目をやると、そこには、等身大のカエルがいた。

「ぎゃー!」

 俺も思わず悲鳴を上げてしまった。その声でまた向こうも悲鳴を上げた。
 ――悲鳴のラリーが3回ほど続いたところで、向こうの口から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

「あれ、も、もしかして、シンジ?」
「その声は……コーちゃん!? なんでカエルの格好なんてしてんだよ!」
「そっちだってなんでウサギの……え、カエル?」

 今度はお互いに自分の姿を確認して、また二人で悲鳴を上げた。

「さっきまで教室にいたよな?」
「ああ、二人で鳥獣戯画のモノマネしてたはずだ」

 自分で言いながら、なんの遊びだそれ、と思ったが口にはしなかった。面白かったし。

「もしかして俺たち、転生しちゃった?」
 コーちゃんの言葉で、前に読んだ異世界転生モノのラノベを思い出した。
「転生って……鳥獣戯画の世界にかよ! ありえねー!」
 そう言われてみると、周りの風景も水墨画のようだ。どうやらそういうコトらしい。この後一体どうなるんだと不安が胸を覆う。

「あ、今俺、マジで口から煙吐けそう。見てて」
 突然、コーちゃんがふざけたことを言い出した。目をやると変なポーズを取って口から煙を吐き出した。
「あっはっは! すげー!」
 いつもより軽い身体がぴょいんと跳ねて、笑い転げた。

 大笑いして息を切らしながら、まあなんとかなるか、なんて楽観的な自分がいた。

=======================

たらはかにさんの以下の企画に参加しております。(頑張って削っているのですが文字数オーバー! 恐縮ですがご容赦ください…)

難しいお題だなぁ。今週はお休みしようかなぁなんて思っていたところに、「鳥獣戯画ノリ」でふざけて遊ぶ男子学生の姿が思い浮かびました。

そんなわけで「鳥獣戯画ノリで遊んでいた男子中学生、マジで鳥獣戯画世界に転生してしまった件」という感じの物語にしてみましたが、いかがでしたでしょうか。

ちなみに、モチーフにした超有名な以下の部分、実際には煙を吐いているのではなくて、「相撲を取ってウサギを投げ飛ばしたカエルが気を吐いている」というシーンらしいのですが、まあその当たりは彼らもわかっていなかったということで一つ!

画像引用元: Wikipedia「鳥獣人物戯画」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?