夢み心地のアンビエント・チル曲を作る5つのコツ
のつづきです。機材セッティングや失敗談などは前回の記事をお読みください。
②手にのるセミモジュラーシンセは小宇宙をまとって / Pluto with HOLOGRAM microcosm
modern soundsのセミモジュラーシンセ「Pluto」とHOLOGRAMのエフェクター「Microcosm」を使った
王道の古典的なアンビエント・チル
です。
動画
撮影時に3曲レコーディングした中から一番気に入った曲を選び、ミックス、マスタリング、動画編集をしました。
楽曲の話をする前に今回の曲のようなブライアンイーノをはじめとする
古典的なアンビエント曲を作るポイント
を書きます。よかったら参考にしてください。
①良質なリバーブエフェクターを使用する
乱暴な言い方ですが、心地いいアンビエント曲を作れるかどうかは
リバーブエフェクトのチョイスで決まる
と言っても過言ではないです。
HOLOGRAM Microcosmをはじめ、STRYMONのBigSky、NIGHTSKY、良質なプラグインなど、お金がかかっても自分が表現したい空間を実現できるエフェクターを用意することが最も重要です。
演奏の醍醐味や外活をしたい人、ライブパフォーマンスしたい人はハードウェアをおすすめします。モノとしてエフェクターを触りながらの音作りは
ソフトウェアでは味わえない楽しさがある
からです。
話が少し脱線しますが、もし欲しい機材があっても予算があわず、妥協して予算内の機材を購入しようか迷っている場合は、できれば妥協せずにお金を貯めて本当に欲しい機材を買うことを断然オススメします。
筆者の経験上の話になりますが、価格が高くても自分の直感が「これだっ!」と思った機材を買った方が、自分の実力があがり、音へのセンスが磨かれるはずです。そして次のステップへ進む速度が加速します。
②BPMを遅く、音数を少なくする
古典的なアンビエントはゆったりと、激しくないサウンドが特徴です。そのため余白の多い空間を埋めようとしてついつい音数を多くしてしまいがちです。
長時間聞いていても心地いい雰囲気が続くように少ない音数でアレンジを考えた方がいいと思います。
③音を少しずつ変化させて曲を展開させる
ゆっくり音色を変化させながら曲を展開させることが大事です。
音色やコード進行が急に変化することは
避けた方がいい
です。
変化しているかしていないか分からないくらいがちょうど良く、長いスパンで変化させるように構成を考えることをおすすめします。
コードはやハーモニーは調性の強いものは避けて、
抽象性の高い響きを選ぶ
とかっこよくなります。
④小節線をなくしてもOK
動画ではPlutoのシーケンスで曲が進行しているので、小節線がきっちりと決まっています。それが悪いわけではないのですが、抽象的で捉えどころのないアンビエントな雰囲気を出すためには、
小節線やビートに支配されない展開も効果的
です。
小節線のない楽譜があるとすれば、そこにポン、ポンと音を置いていくようなイメージで制作してもおもしろいと思います。
⑤雰囲気を聞かせる
「③音を少しずつ変化させて曲を展開させる」にも関連しますが、メロディーやビートを聞かせるよりも、
音色や響き、全体の雰囲気を聞かせることを重視
した方がいいかもしれません。
印象的なメロディーがあるとダメというわけではなく、メロディーがあることによって聞く人のイメージを限定するのを避けるという理由です。
またビートが強すぎる場合はグルーヴが発生するため、それは古典的なアンビエントではなくなります。
ビートを最小限にして、メロディーらしきものやメロディーのカケラのようなものを挿入することで抽象性が高くなり、アンビエントミュージックとしての美しさが際立ちます。
それからメロディーなどに使用する音色のアタックを極力遅くするのもお忘れなく。
Plutoのパッチ
配線をシンプルにしてクロックを遅くしました。2つのパルス信号STYXをVoice2、NIXをVoice1のSTEPに接続してシーケンスの動作を制御、Voice1のSTEP INVERTをVoice2のDIRECTIONに接続しました。
STEP INVERTとは
STEPへの入力信号に対して反転したパルス信号を出力
DIRECTIONとは
STEPが接続された状態で信号を受けた場合、Voice2のシーケンサーの進行方向を逆にする(動画00:24あたり)
WIDTHでパルス幅を調整、SPREADでパルスのタイミングの調整が可能です。
波形
Voice1のモード(波形)はWavetableを選択
Voice2のモード(波形)はPercussiveを選択
どちらの音色も暗めの設定にしました。(筐体のVoice1,2と記載があるつまみ)
Wavetableは32種類のウェーブテーブルをモーフィング、PercussiveはウェーブテーブルとFMオシレーターがブレンドされた音色です。
ピッチ
Voice1,2のシーケンサー各4つのステップは、Voice1はメロディーのような位置づけで若干上の方のピッチに調整し、Voice2はベース的な音色にするため下の方のピッチにあわしています。
鍵盤的な発想ではなく、狙った音にならないPlutoならではなのでおもしろいです。
Plutoの解説に関しては宮地楽器さんのサイトがとてもわかりやすいのでオススメです。
Microcosmのセッティング
途中でつまみの値をいじっていますが、パラメータのセッティングは下記の通りです。
GRANULESのHAZEのDタイプ(4番目)を使いました。"もや"や"かすみ"を意味するHAZE(ヘイズ)のエフェクトはマニュアルに「粒の集まりで、うねる音を生み出します」とあるように、コーラスがかかった厚みのあるリバーブサウンドが特徴です。
そのDタイプのプリセットについてマニュアルには「通常速度と半速度の粒を混ぜることで、拡散したようなテクスチャーを作り出します」と説明があります。
通常のリバーブのような感じではなくて、アンビエントミュージック特有の奥行きと広がりを音色として原音に付加してくれます。
途中からPlutoの音を少し歯切れのよいサウンドに変化させましたが、Microcosmを通すことでサスティンが加わり漂うような音色になりました。
映像について
Final Cut Pro Xで編集しました。
屋外でレコーディングした後に、機材のカットとは別に素材として使用するための映像を10数個撮影し、作品に挿入しました。
カラコレの後、全体的に青みがかったノスタルジーな雰囲気にするためのカラグレをしています。
屋外での撮影でしたので、太陽の位置がその時々で変わり、前半と中盤以降で色味が変わっていますが、時間の経過を作品に含めるという意味でそのままにしています。
SF映画や宇宙的な雰囲気のある音なので、映像もどこか非日常的な雰囲気が出るようにしました。
例えば00:29の同一人物の異なる時間をレイヤーしたり、04:08の雲の動きを50倍にして順再生と逆再生をつなげて時間の感覚を曖昧にしたりです。
アンビエントな音は
何気ない風景との相性がとてもよく、
映像に何らかの意味を持たせる
ような効果がある
ように感じます。
それは
音のイメージを限定しないことで、
リスナーが自由に解釈できる余地を生み出す
からだと思います。
クッションに寝転がって聞くアンビエント
2024年4月27日(土)筆者が出演するライブが決まりました。
Ambient Pillowというイベントで
NicaFelt(ニカフェルト)名義で演奏
します。
ピアノやセミモジュラー 、エフェクターなど織り交ぜて心地いいアンビエントな音をたっぷりお届けします。
入場料¥1,000のみ!
フードとドリンクは持ち込み自由
です。キャパは20名の空間。
ぜひチルアウトしにきてください。
イベント詳細
お読みいただいてありがとうございました。
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