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格差社会のサブカル臨床

イラストⒸsigureni様

今年からぼちぼち調査研究をしているが、とても興味深くて楽しい。

ここ数年は事例研究を中心に学会発表や論文執筆をしていたので、インタビュー調査は院生時代以来である。ずっとやりたかった研究テーマではあったのだが、なかなか時間が捻出できなかったのだ。幸いにして、今は多少の時間と、研究費を与えられている(足りない分は持出になってはいるが)。

サブカル臨床に限ったことではないが、この業界はすごい格差社会だ。

博士課程の1年目の頃、同期2人が何かの研究費をもらっていた。私はその研究費から外れてしまったのだけれど、そのとき強い危機感を抱いたのを覚えている。

研究費もらえない→研究できない→業績増えない→研究費もらえない

デフレスパイラルに陥ってしまうかもしれない。そう考えた私はD1のあいだ自腹を切って調査研究を行い、D2のときには研究費をもらうことができた。

非常勤掛け持ちで社会に出て3年の間に博士論文を書いたが、博士号をとってもなかなかアカポスの就職が決まらず、なんだかんだその後も4年くらい非常勤掛け持ちをしていた。

D1のときと同じ危機感を抱いた。

自分は非常勤掛け持ちで、基本的には任期付きか単年度契約だったし、昇給もなかった。学会費を払って、学会発表のために出張するのも全部自腹だった。そして学会出張で休めば基本的に給料が出ない。就活の交通費もばかにならなかった(落ちると余計にそう思った)。現場の仕事は過酷だから研修も必要だ。SVも個人分析も自分が受けたいから受けてるし別にいいんだけど、まあ当然のごとく、お金は貯まらなかった。

一方で、早くから(主にコネで)アカポスに就いたひとたちは、まず研究室があって、研究費をもらえて、しかも給料もどんどん上がっていく。まあ雑用とか色々あるんだろうけど、それでも圧倒的に恵まれていると思う。そんな人たちと業績で競うのは、水鉄砲しか持ってないのにマシンガンに対抗するようなもので…。

雇用が不安定→収入も不安定→研究できない→業績増えない→就職できない

こうなると本当にやばいのではないか、と思った。おそろしいのは、こうした状況で心身を壊してしまって、まじで金銭的に困窮して、学会とかにも顔を出せなくなってしまうことだった。そうなったら詰むと思った。実際、就活に疲れた自分は若干病んでいた。就職について悩むクライエントの言葉に泣きそうになるくらいには。

それで何をしたかというと、とにかく学会に赴いて人脈を作っていた(おおげさな言い方だけど知り合いを増やすということ、運が良ければ仕事につながったり、一緒に研究を…とかになるかもしれない)。そうやってぼちぼち学会発表も続けていた。

結局コネも何もないところに就職したが、アカポスに就いてみて思うのは、やっぱり恵まれてんじゃん、ということである。

在野だったときは不安定な雇用であんなに苦しんでいたのに、今は各種手当も手厚いし、研究室と研究費ももらえるし、まあ業績を作れというプレッシャーはあるけど、(むしろこの状況で業績ぜんぜん作ってない先輩とか何してたんだろうと思うくらいには)恵まれている。

お金と時間に余裕ある→業績作る→依頼くる→業績増える→研究費もらえる

正直、この状況を心ゆくまで享受できていない自分がいる。これまで自腹切手研究するのが当たり前だったから、研究費を使うことに慣れていないのはもちろんある。それにみんながデフレスパイラルの中で喘いでいるのに、自分だけ助かったって…という思いもあるのかもしれない。

この圧倒的な格差社会をどうしたらいいのだろう。もはやサブカルは関係ないのだけれど、そんなことを毎日考えながら研究をしている。







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