自分自身の思考を確立する

人は、多かれ少なかれ、他人の考えを借用して生きている。たとえば、職場などで有能な若手が現れたとしても、すでにその職場にいた先輩は、その若手をすんなりと受け入れるだろうか。おそらく、答えは「否」であろう。なぜなら、日本では、年上の人間の方が社会的に高い位にあるという考えが一般的に受容されており、そうした考えが染みついた人たちは、「年齢」を基準に他人を評価し、自分たちもその通り行動するからである。

しかし、よく考えてみると、年齢中心主義ともいうべきこの考え方は、実はその先輩たちが生み出した思考(思想)ではない。彼らは、いつ定着させたかはわからないが、どこぞと知らない他人の考えを借用し、自分に投影し、いつからかそれを自分の生き方・考え方として受け入れ、行動するようになったのである。

確かに、年齢中心主義という考え方にも、メリットはあるだろう。たとえば、「年齢」という基準は、客観的かつ量的に判断しやすく、他者との比較が容易である(つまり誰が何歳かがはっきりするし、他人と比較して優劣をつけるのが容易である)そのため、先輩・後輩といった人間関係が互いに明瞭になり、主・従の関係も明確になるので、職場内で誰が指揮をとるかがはっきりする。さらに、後輩は先輩という目標を手に入れるので、自分の将来像を明確にすることができる。年齢中心主義という考え方は、「年齢」という基準に従って、人間同士の優劣をつけやすい思考であるといえるだろう。

ここから先は

1,176字

¥ 108

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?