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道草ピーターパン
2021年2月13日 17:09
あの日も蝉が忙しく働いていた。私は祖父の枕元に遠慮気味に近づいた。手には宇宙戦艦ヤマトの模型を握りしめて。夏休みの宿題だ。戦争のことを調べる……幸い、父も母も戦争を経験していた。二人ともまだ子どもだったが、広島に落ちた原爆の光を記憶していた。父は山口県の大島郡から、母は広島県の呉市から、その光で染まる空を見ていた。空を突き刺すような光線と地を突き上げるように響いた音は、それまで