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要チェックな受賞作家さんを勝手にピックアップ

 年の瀬の足音がひたひた迫るのが聞こえるこの頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。米国は感謝祭に伴い短いホリデー期間に入っております。といっても、我が家は旅行に出かけるわけでもなく平常運転です(七面鳥も焼きません)。
 ちなみに首の方は色々試行錯誤してまして、無理をすると痛みが出ますが、ストレッチをして首まわりの筋肉を緩めると軽減します。筋肉の緊張はよくないですね。焼いた七面鳥のように固くなるのはいただけません。
 …あれ、スベったかしら。
 七面鳥は固くなりがちなんですよ〜革を噛むかのごとくひどいことになるんですよ〜というご当地ネタに「いただく」をかけてみたんですよ(←やかましい)。

 なんて話は置いといて、今日はnoteにて交流させていただいている作家さんをお二人ご紹介させてください。お二方とも新人賞や文学賞を受賞なさっている実力派。女流作家という括りは今時物議を醸すのかもわかりませんが、新進現代女流作家さん、と勝手に目をつけている方々です。

 まずは、ご存知の方も多いかもしれない花丸恵様。なんと、note創作大賞2023恋愛小説部門に入選なさった方です。note創作大賞といったら、応募総数何万作品でしたっけ…2万、いえ3万?恋愛小説部門だけでおそらく数千なのでは。中間審査を通過するのだって顔が引き攣る競争率です。素晴らしい快挙!
 だがしかし、花様の筆力のすごさは、私知ってました(えへん)。何といっても掌編・短編の質が飛び抜けておられて、短編の名手のお一人と勝手にお呼びしていまして。
 まずはこちらを読んでいただきたい。

 繊細な心理描写と、あたたかく端正な筆致。「ガラスの手だな…。」から粉々に砕け散った主人公が、ゆっくりと立ち上がる景色がとてもいい。人生に負けても、まだ終わりではない。化学反応を起こすように、人と人の間には思わぬ何かが生じる。相手を奈落に突き落とすこともあれば、絶望から救うこともある。そう心に響きます。ガラスと将棋のイメージが非常に鮮烈かつ効果的なのも相まって、参りました(号泣)、となった作品です。珠玉の逸品と呼びたい。それからもう一つ。

 すごいセンスです。フォークソングとイマドキの少年の会話の相乗効果に度肝を抜かれました。ベンチで二人の少年が喋っているだけ…にもかかわらず、何という奥行きと広がりがあるのだろうか。花様、こういうガジェット(場所やアイテム、あるいは歌もひっくるめて)に心理描写を投影して絡めるセンスがずば抜けていると思う。
 人物描写が説明的でないのに非常に的確で、ほんの数行でそれがどういう人物であるのか、読み手に直感的に伝わってくるのも見事。加えて、短い会話でキャラクターの心情やその変化が、実に瑞々しく鮮やかに感じ取れるのです。花様はキャラへ注ぐ視線がとてもあたたかいなと感じるのですが、それがキャラの描写にも反映されているのだろうかと思います。
 それら花様の美点がもれなく詰まっているのが、入選作の『一泊二日』。

 舞台は仙台。花様の持ち味の、場所とアイテム(主にご当地名物)に絡んだ繊細な心理描写と会話の妙が遺憾なく発揮され、スリリングな展開と相まって読み始めたら止まらない。主人公の心情の変化を見事に捉えた筆致、構成の確かさ、完成度の高さ、素晴らしいです。重苦しいテーマに仄かなユーモアも漂い、読後の余韻の爽やかなこと。ぜひ読んでいただきたい♪
 他にもたくさんの作品をお書きなので、訪ねてみてくださいませ。今後のご活躍を心より応援しております!

 もうお一方は、相羽亜季実様。相羽様、私は社会派作家さんと密かにお呼びしています。繊細で抑制の効いた筆致の中に、現代社会のひずみを真正面から捉えるたいへんな胆力を感じる、そういうご作風に感じます。
 2020年千葉文学賞を受賞した『いのちの時間』が、千葉日報にて連載されています(下記リンクから読めます)。
 …いや、完成度がすごい。豊かな表現力と生き生きとした人物造形に瞠目します。そして、心温まる人情劇…というだけに止まらず、読者に様々な思索を促す骨太な視点がある。ぜひ読んでいただきたい作品。

 相羽様の持ち味は、人物造形の確かさと、目を背けたくなるテーマにもしっかりと向き合う「勇敢さ」だと思っているんですが、こちら『忘れえぬ女(ひと)』も凄まじい作品。
 『いのちの時間』と本当に同じ作家なのかと目を疑うほどに思い切ったテーマとストーリー。どのようにして資料を集めたのかと思うリアリティ。巧みな人物造形。そして、最後の最後に「そうだったのか…!」と読者を驚かせる真相が用意されています。社会派サスペンスとでもいうべきでしょうか。タブーを恐れず、ご自分の問題意識に従ってテーマに切り込む姿勢には感嘆するばかりです。

 他の作品にも、今度はそう来る!?と仰天する自由さとパワーを感じます。
 こちらの『友達について真面目に考えてみた』も、思春期の青少年が織りなすほのぼのとしたストーリーか、ふむふむ…と思っていると、がつんとやられます。そして、目頭が熱くなります…。

 自由奔放、縦横無尽の力強いご作風。ぜひお読みになってみてください。
 今後のご活躍を心より楽しみにしております♪

 ということで、年が変わる前にご紹介しようと勝手に思っていたお二方を取り上げました。他にも好きなクリエーターさんが沢山おられるんだけど…また少しずつご紹介したいなぁと思っております(ご迷惑でなければ…)。
 私も頑張って書こう…。

 それでは、忙しない時期ではありますが、皆様どうぞご自愛くださいませ。 


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