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トーストびより vol.1

これまで作ったトーストのこだわりや青果への愛を綴る「トーストびより」。
トースト習慣を始めた2020年の4月21日、桜のトーストからはじまります。
マイペースに更新していきますよ🍞

桜のトースト

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誕生日:2020年4月21日(火)
愛しむもの:マーガリン、ブルーベリーとチョコレートの特製ジャム、食パン

朝6時に散歩に出た。青空に薄い雲がまとって気持ちのいい朝だった。
歩くのはいつもの川沿いコース。
川沿いなら桜が見れるかなと思ったけど、桜は8割ほど散っていた。
一昨日までは結構咲いていたのにな〜と、葉桜になった木々を見る。
桜の木の下は、散った桜でしっかりピンク色に染まっていて、また新しく一枚、一枚と重なっていく。ここまで散っているなら、地面を見ながら歩くのも良いなと思った。
綺麗な花びらを見つけては、ポケットにしまった。
強い風が吹いたときに桜が舞う様子を眺めてみたり、運動不足の身体を走って動かしたり。
そうして1時間ほど経過して、私のお腹がぐーぐー鳴るので、家に帰った。

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「来年こそ満開の桜の木の下で花見がしたい」という思いで桜をテーマにしたトーストを作った。

パン1枚にこだわろうと決めると、マーガリンをパンに塗るだけなのにこだわりが止まらない。何回トーストの上をバターナイフで撫でたんだろう。トーストの高さに目線を合わせて、撫でるときの力加減に神経を集中させる。

甘いトーストが食べたかったのと、家にある食材で作りたかったから、ブルーベリージャムとチョコレートを混ぜてみた。
味見してみたら予想以上に美味しくて、このジャムを一面に塗って美味しいトーストできあがり、でいいんじゃないかという気持ちがよぎる。

近くにあった爪楊枝の先端にジャムをつけて、はじめてトーストの上に特製ジャムを置いてみた。マーガリンの上ではじいた。油分のあるチョコレートを足してから、レンジで温めて水分を飛ばした。
爪楊枝では繊細さに欠ける。裁縫用の針を道具箱からひっぱりだして使ってみる。これはちょうど良い細さだ。

構図は、私が大好きな浮世絵をイメージして。満開の桜で喜んで踊っている人も描いてみた。桜の花は微妙に色を変えたくて、ブルーベリージャム単体を使った。花の中心にはブルーベリーの種をのせる。

家にある平皿は少なかったけど、ちょうど良いサイズがあった。縁のひらひらも良い感じ。
絵を描くために買ったくすんだベージュの紙を敷いて。
最後にポケットの中に忍ばせていた桜の花を、お皿の上にのせた。

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初めて焼いた姿を見たとき、二度驚いた。

ひとつは、食材が別の魅力を見せたこと
部屋中に広がる甘く香ばしい香り。マーガリンが溶けて、黄色くトーストに染み込む。ジャムが熱でグツグツしたようで、表面が変わった。トースト全体が小さくなり、ずっしりと重みのあった食パンが、熱でからっと軽くなった。
食材の隠れた特徴や魅力は、熱を通してようやく見えてくる。

ふたつめは、トーストが食べ物に見えたこと
もちろん完成形の味を考えて食材を選んでいるし、そもそも私は朝食として作っていた。
しかし、「おいしそう」と呟いて、自分のお腹が鳴ってやっと気づいた。わたしが観察("観察する"参照)をしているとき、食材を「食べるもの」として見ていなかったことに。
トースターに入れるまでは「食材は愛でる対象」「食パンは魅力を発揮させる舞台」という認識でいた。「食べるもの」という先入観を排除して、ようやく食材(いや、”食”材という呼び方をそもそも変えるべきか・・・?)を愛でる対象として純度高く観察することができる。
その観察で見えてきた食材の魅力を食パンの上で表現し、熱を通す。
焼いて初めて、美味しさと変化の美("美味しさ、変化の美"参照)と出会う。
熱を通した食材は「愛でる対象」に加えて「食べる対象」としても私に魅せる。

この習慣は、私の幸福度にとてもマッチしている。
わたしは、在宅の時間で「感性の扉をひらく習慣」を作りたいと思っていた。
先入観や日頃の忙しさによって日常のものごとを歪んで見てしまう眼球を、日常的に取り替えたかった。(昨日の眼球で今日を生きている時点で「私って先入観たっぷり」と眉間にシワよっちゃうから、日々の習慣にしたかった。)

この習慣では、食材と出会ったとき・熱を通すときの2回(またはそれ以上)、わたしは食材の魅力に触れる。熱を通すことをトリガーに、食材に対する私認識が変わる。
つまり、食材(=日常のもの)の魅力を通じて自分の感性が何度も生まれ変わる。青果愛好家(※自称)として、眼球を取り替えたい人間として、これはめちゃめちゃ良い習慣だぞ、と思った。

自分のために、毎朝トーストをこだわりたい。そう思った。

次回[トーストびよりvol.2]

この次の日に作った椿トーストから、数枚ずつ紹介していこうと思います。
初回で興奮してたっぷり書いちゃいましたが、写真フォルダにはすでに3桁のトーストが溜まっているのでね・・・。(遠い目)

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