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米子市・境港市内のビデオレンタルショップ年表(あるいは風景論としての年表制作)

展覧会「見る場所を見る2——アーティストによる鳥取の映画文化リサーチプロジェクト」(2023年1月30日〜2月5日)の開催に向けて、米子・境港市内のビデオレンタルショップ年表を作成した。会期までにもう少し手直ししたいが、ひとまずここに暫定版を公開する。(ヘッダー画像は、Googleストリートビューに記録されていた2014年8月の「ビデオハウスアングル」。)

米子市・境港市内のビデオレンタルショップ年表(1984〜2022)暫定版

レンタルビデオ店に関する資料は、映画館と比べても数が少なく、ほとんどの店舗の正確な開店・閉店年月日は不明である。本年表の作成にあたっては、鳥取県版の『タウンページ』と『ゼンリン住宅地図』を照らし合わせて、おおよその開店・閉店時期を割り出した上で、適宜、地元の方の情報提供や各店舗の公式ウェブサイトなども参照しながら追記・修正を加えた。

『タウンページ』の「レンタルビデオ」(貸フィルム/貸ビデオ)の項目には、明らかにレンタルビデオ店ではない店舗や、疑わしい店舗も記載されている。その多くはビデオ販売専門店やアダルト向けの店舗で、時折、映像製作会社やレコードショップが紛れ込んでいることもある。それらは今回の年表から省いたが、おそらく現時点で年表に掲載している中にも、レンタルの実態がない店舗が残っているだろう。当時の利用者や関係者を探し出さないかぎり、これ以上正確な実態の把握は難しそうだ。(「ここが違う」「ここはこうだ」など、情報提供、お待ちしています!!!

それでもこの年表の作成によって、米子・境港におけるレンタルビデオ文化盛衰の歴史の大きなうねりを感じることはできる。80年代中盤からのレンタルビデオ店の急速な増加、90年代終盤の個人経営店から大型チェーン店への転換、そして2000年代以降の、ネット動画文化隆盛に伴うレンタルビデオ文化の衰退……いずれも全国的な傾向とほぼ同期していると言えそうだが、米子・境港という地域に固有の特徴も見て取れる。同じ県内でも、鳥取市では2015年時点でゲオ以外のすべてのレンタル店が閉店しているのに対して、米子・境港では現在もTSUTAYAゲオ、そして山陰ローカルチェーンのアリオン皆生店が現在も営業を続けているのだ。

メディアや作品(コンテンツ)が消費されていく速度は、ひたすら加速を続けている。もはやノスタルジーに浸る暇さえなく、これまで当たり前だった風景がいつしか一変しており、その新たな風景もまた、記憶することも記録することもできぬまま押し流されていく。いま私(たち)はいかなる時代に生きているのか、その時代を如何に反省し、次の時代を如何に構想するべきか、考えているうちに、もう次の時代が来てしまっている。

年表制作は、時代の速度に抵抗あるいは対応するための手段である。カメラを回していても追いつかない風景の変貌を捉えるための風景論であり、絵を描くのが絶望的に苦手(下手)な私にとって唯一可能な風景画である。過去の思い出に浸り、現在から目を逸らすためではない。地に足をつけて歴史の中に身を置くために、自分自身の手で歴史をなぞり、年表を制作すること。そして、歴史の線をどの方向に伸ばしていこうとするのか、どの線の上を歩んでいこうとするのか、決断すること。


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