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#9 『人生はそれでも続く』

みなさん読書は好きですか?新マガジン「積ん読感想文」のスタートです。他のマガジンとは異なり、日々の読書記録を綴っていきたいと思います。書評ではなく、その本を読んで世界をどう拡げたかに注目したいです。渡独後は和書はもっぱら電子書籍で読むことになりそうなので、それまでは紙の本を楽しみたいと思います。

今日の本

読売新聞社会部「あれから」取材班 『人生はそれでも続く』 新潮社,2022年.
読書難易度:☆(読みやすい)

日本中が注目したニュースの「その人」がその後どうなったかに注目した本です。山で遭難して救助された人や米同時多発テロを生き延びた人、さらにベストセラーの著者まで、22人の「その後の人生」が描かれています。ここではその中から2人を取り上げたいと思います。


日本初の飛び級入学で大学生になった17歳(1998年)

当時高校2年生だった千葉県の佐藤和俊さんは、17歳で千葉大学へ飛び級で入学、物理学を志します。日本初の飛び級入学ということで注目を浴び、海外研修時にはメディアの同行取材を受けたほどでした。大学院にも進み、修士号を取得。博士号取得を志すも、研究機関での初任給の手取りは15万円と、生活がままならない状態でした。結局佐藤さんは2013年トレーラーの運転手に転職、現在は購入した戸建住宅で家族3人で暮らしているとのことです。
 現在でも日本では、「大学院で研究する」というと、「お金にならない」「実社会では役に立たない」「社会性が身につかない」など否定的な印象が強いように思います。しかし周囲を見渡すと、「生成系AIモデル」「自動運転車」「合成燃料」など、未来の生活の安全や利便性を支える多くの技術は大学での研究に端を発しています。工学的な技術開発は企業研究所が担う部分が大きいとしても、企業研究者を育てているのはやはり大学です。佐藤さんのように金銭的理由で研究の道を諦めざるを得ない人が増えれば、日本の科学技術力はますます先細りになっていってしまいます。
 先の投稿「お金がないから、留学します」では、ドイツの大学院で研究して博士号を取得するのに基本的にお金がかからないことを説明しました。渡独後は現地の研究者がどんな価値観でどんな生活をして科学の未来に貢献しているのか、レポートしたいと思います。


赤ちゃんポストに預けられた、想定外の男児(2007年)

2007年5月、熊本市の慈恵病院に「こうのとりのゆりかご」、通称「赤ちゃんポスト」が開設されました。開設当初は大きなニュースになりましたが、今の大学生くらいの年齢の方だと、聞いたことがない人がいるかもしれません。この「ゆりかご」は、様々な事情で子どもを育てられない親が、人に知られず病院に子どもを託す仕組みです。背景として、熊本県内ではその頃、乳児の置き去りや出産後に放置して新生児が死亡する事件が相次いだのです。初年度は17人が預けられました。本書ではその中の一人である宮津航一さんの人生が、「ゆりかご以前」「ゆりかごの後」の2つの視点から紹介されています。

2007年当時の僕は英語教師最後の年で、高校3年生対象の「時事英語」(最も高いレベルの選択授業の一つでした)を受け持っており、開設間もない「赤ちゃんポスト」について取り上げたのです。女子校だったので、自然と生徒の関心はとても高かったです。諸外国での出産や人工妊娠中絶の状況を調べて英文で読み、熊本の「赤ちゃんポスト」についてどう考えるか、英語で発信する試みでした。あの授業を取っていた十数人の生徒は今34歳、子どもがいる人もいると思います。もしこの記事を読んだ人がいれば、ぜひご連絡ください。

今日もお読みくださって、ありがとうございました☕️
(2023年7月11日)



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