見出し画像

連れて行かれる

 江ノ島が好きだから、急遽行くことにした。夏が終わっていると信じて。

 9月14日、晴れていた。友達が天気予報を見てくれた。最高気温33度。真夏の38度に比べたら、涼しいと錯覚してしまった。お馬鹿だから長袖のワンピースを着て行った、真っ白の。(本当は馬鹿に「お」はついていなかったが、友達にちくちく言葉だから「お」をつけなさいと怒られた。)

 去年の4月、大好きな人がにじランドへ行ってしまった。最後会いに行った時、この白い長袖のワンピースと燕のそこそこ長い靴下を身につけていた。大好きな人は江ノ島によく行っていた。なんだか今日はいる気がした。ひと目見て、もねこがいるとわかるようにこの服装で行った。暑かった。

 いつも江ノ島へ行く時は朝早くに出発するが、この日は昼前までゆっくりしてしまった。まったく…。
 出発が遅れた罰か、電車が動かなくなった。大きな駅で降り、ミスドでおいもドーナツを食べた。お昼ご飯に、たらこと鮭のおむすびを買った。電車が動き始めた頃ホームに降り、速く流れる雲を眺めていた。

 今日は藤沢から江ノ島電鉄に乗った。人が多かった。平日の早朝の良いところは人がいないこと、悪いところは眠いこと。この日は昼前に出て、電車が見合わせていた事もあって、着いたのが13時を過ぎていた。人が多かった。

 江ノ島に着くと、そのまま江ノ島水族館へ向かった。だって私は年間パスポートを持っているから。クラゲとイルカショーを見た。来世はイルカ界。イルカショーを待っている間におむすびを食べた。イヤホンを落とした。

 海は暑かったので、また夜に来ることにした。いつもはあまり観光はしないのだが、友達がおすすめしてくれたタコ煎餅を食べた。しらすコロッケも食べた。

 江ノ島は後回しにして、鎌倉へ向かった。去年仕事で来たことを思い出した。8月の暑い日で、会ったばかりの人とお酒を飲んでいた。今はその元気がない。早く元気になりたいと思った。

 この日はずっと気になっていた、鎌倉コトリという文房具屋さんへ行った。「誰かとつながるポスト」という面白いものを見つけた。好きな封筒に、何か書いた便箋と小さな贈り物を入れ持っていき、店の中に置いてある封筒と交換する、というものだ。その場でレターセットを買い、さっき買ったばかりの江ノ電マグネットを入れた。
 交換した茶封筒の中には、おそらく子供が書いた手紙と、パンダのスタンプとメモ帳が入っていた。可愛くて、可愛くて、私は道端で写真を撮った。

 涼しくなってきたので、江ノ島に戻った。着いた頃には水族館は閉まっていた。灯台に登った。登り終わる頃には、真っ暗になっていた。風が強くて良かった。夜の海は怖かった。
 海のことは好きだ。でも海を見るとかえりたくなる。夜の海はかえりたくなってしまうから、友達に電話してもらった。早く帰りなさいと言われたから早くに江ノ電に乗った。

 多分、大好きな人に会えたと思う。良かった、会えて。



この日に思いついた亜短歌!


白い服 燕の靴下 黒い靴 最後に会った時の格好だよ

江ノ島へ行こうとしたら見合わせた電車のおかげでドーナツ食べた

蜜芋の丸いの8個集まったやつを食べる 電車早く動け

小田急線 鼻をすすりて雲を見る 置いて行かれた日傘が泣いてる

ハムスター ハムで包んで一口で食む幸せよ 全てが夢です(急に何…)

田舎町 体毛の濃い一軒家 カナヘビたくさん ゴキブリたくさん

ぷつぷつと弱火の街に富士が乗る 夜の海 黒に連れて行かれる

良かったね 闇に誘われわたしたち 死んでないうちにこの目で見たよ

暗闇の海から白い天使来る 深海の2K家賃は無料

夕日消え 光へ集まる人たちへ 海は逆だよ 回るろうそく


また!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?