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親密さ、とは何か? あるいは距離についてー『親密さ』論
『映画よさようなら』(フィルムアート社、2022年)収録の書き下ろし論考です。
『親密さ』(二〇一二年)は、濱口竜介がENBUゼミナール映像俳優コースの卒業制作として監督を務めた作品である(濱口は同コースの講師だった)。それぞれ二時間を超える長さの二部構成で、トータルで255分、大長編と言ってよい。もっとも濱口は、その数年後に更に長い(317分)の『ハッピーアワー』(二〇一五年)を撮ることにな
神と人との間ー『偶然と想像』論
『映画よさようなら』(フィルムアート社、2022年)収録。初稿データなので単行本とは一部表記が異なる可能性があります。
偶然性にあって、存在は無に直面している。
『偶然性の問題』九鬼周造
人生においては、偶然というものを考慮に入れなければならない。偶然は、つまるところ、神である。
『エピクロスの園』アナトール・フランス
1。偶然性の問題
昭和十年(一九三五年)のことなのでずいぶんと昔の話
言語の習得と運転の習熟ー『ドライブ・マイ・カー』論
『映画よさようなら』(フィルムアート社、2022年)収録。初稿なので単行本とは異同があるかもしれません。
村上春樹の短編小説「ドライブ・マイ・カー」は『女のいない男たち』の冒頭に置かれている。六編が収められたこの短編集は、この作品から最後に据えられた書き下ろしの表題作まで、ざっくりと「女のいない男たち」(作者自身が「まえがき」で述べているようにヘミングウェイの短編集のタイトル“Men With
彼女は何を見ているのかーひとつの濱口竜介論
『この映画を視ているのは誰か?』(作品社、2019年)収録。初稿なので単行本とは若干異同があるかもしれません。
まぶただけ開いてまだ眠ったままの目が、一瞬、見えた。それからすぐに、目は暗闇を見て、わたしを見た。良介は筋肉の反射反応のように素早く強く目をぎゅっと閉じて、それからまた開けて、わたしの両手に包まれたその顔からわたしを見た。
柴崎友香「寝ても覚めても」
したがって、見つめ合う二つ