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「私」ではなく「私たち」と考えること

佐久間裕美子さんの新刊『Weの市民革命』を読んだ。佐久間さんの本はすべてとは言わないまでも基本的には目をとおしていて、若林恵さんとしているポッドキャスト「こんにちは未来」も大好きな番組のひとつだ。

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ニューヨークに暮らす佐久間さんは、いつもアメリカで起きている政治や社会問題、はたまた地元の商店での出来事まで、大小さまざまなムーブメントをひとつの線としてつなげながらその意味を語ってくれる。わたしは彼女が拾い集めてくれた小さな変化の集積に、いつも未来の萌芽を見る。自分には常に価値観をアップデートしていたい(というより時代に遅れるまい)という思いがあるから、彼女の捉える先にはいつも注目している。そして納得したり、感心したり、唸ったりしている。

佐久間さんの最新刊である『Weの市民革命』のなかで、彼女は次の時代に実践していかなければいくべきことは「ステークホルダー・キャピタリズム」だと語る。

「ステークホルダー・キャピタリズム」とは何ぞやと言うと(詳しくは本を読んで欲しいのだが)、これまでの株主優先、利益追求型という体制から脱却し、企業の存在意義を「利益を生み出すことから、ステークホルダーを守り、繁栄させることへとシフトさせるアプローチ」(P.64)のことだ。

ステークホルダーというのは企業の関係者すべてを包括する言葉であり、従業員はもちろん、顧客、コミュニティまですべてが含まれる。そのため企業は、たとえば雇用においての性や人種の平等性、製造物の環境への負荷削減など、さまざまな側面での役割を負う(意義を果たす)必要がある。

正直企業側からしたら、利益だけを追えばいい状況よりさらに酷なお題が突きつけられているとも思うが、そもそもそう「あるべき形」だった(是正しているだけ)とも言える。

その流れのなかで、これまで企業の主流だったノンポリ的なスタンスを異にして、いまアメリカでは政治的・社会的な立場を明示する企業が、多くの顧客から支持されているという。反対に、差別的だったり社会的な責任を果たさない企業についてはSNS等によって告発・拡散され、不買運動が始まるという消費者側のアクティビズムもさかんになっている。顧客側の動きも“あるべき”未来を、加速させているように思う。

わたしも個人的に、資本主義(新自由主義)的な価値観はもう維持できなくなると思っていて、このシステムが生み出した弊害(おもに格差)はかなり大きな問題だと感じている。だから、この変化が推進していくべきだと思うし、非常喜ばしいこととして受け止めている。

とはいえ、小さな自分が「経済」とか「資本主義」みたいな壮大なシステムに立ち向かうことって難しすぎる。その只中でわたしたちが行えるアクションといえば、まずは「早い」「安い」「便利」だけで判断しないことなのかもしれない。

これって適正な価格なんだっけ(誰かが搾取されてない)? この企業から買っていいの(ちゃんと社会的責任を果たしてる)? この素材ってなんだろう(環境負荷はどのくらい)? と、ちゃんと立ち止まって想像力を働かせる。「買い物は投票」という意識を持って、「買う」ことの背後をもっともっと考える。

それはつまり、「自分だけがよければよい」という“私”視点の考え方なのではなく、社会や環境という“私たち”視点で物事を考え、そのつながりで変化を起こしていくということなのだと思う。「私たち」の視点を携えて、みなで連帯していきたい。


きょうは、めずらしく大真面目。詳しくはぜひ本を買って読んでみてください!

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