コロナ第5波で感じた「対価としての給料の大切さ」と「コメディカルの薄給さ」
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コロナ第5波で感じた「対価としての給料の大切さ」と「コメディカルの薄給さ」

佐々木暁洋

実はいまの病院は、もともとコロナ患者は軽症や中等症も含め入院患者をとっていませんでした。
周辺の富山国保病院や亀田総合病院と提携して、「検査・診断」=安房、「軽症」=富山、「重症」=亀田と南房総地域内で役割分担をしていたためです。落ち着いている時期には、このような分担と役割の集約化は理想的なシステムであったと思います。

ところが7月末頃になると、うちでは入院をとれなかったのに
救急車受入PHSに遠方からのコロナ患者受入依頼がかかってくるようになりました。千葉市や柏、市川、成田、長生などから館山に搬送依頼がくるんです。
8月にはいると、30件や70件受入拒否されて、どうしようもなくて房総半島の先端にあるこの病院にまで相談してくる救急隊からの入電が毎日ありました。

幸い多くの電話は軽症や中等症であったのですが、
ある日は、電話のむこうの患者は重症でした。
すでに30件くらい断られていて、いまここで断ったら、次にまたうちに電話がかかってくるときには手遅れかもしれない。病院としては受け入れないことになっている。でもここにERのベッドがあって道具も薬もあって自分は挿管ができる。断るわけにはいかないな、と。
そう考えて、緊急避難的にその患者を受け入れました。

そのことがきっかけとなって病院全体が災害モードに切り替わり、多くのスタッフに負担をかけつつも、様々な部署の協力を得て、臨時コロナ病床4床を1週間足らずで開設することができました。表向きには「中等症ベッド」としていましたが、実際には人工呼吸器も4台確保してすべて「重症ベッド」としても使えるように準備し、運用しました。重症患者の管理については、亀田の先輩に相談したり、本当に重症なケースでは転院をお願いしたりしました。

酸素ステーション…というのも話題になりましたが、
おんなじ理屈でERのベッドを1-2床酸素ステーション的に運用しようということで、
僕が対応できる日に限って、一晩ERで酸素投与をして翌日には調整本部が受入先を決定する時間を稼ぐ、という方法で患者をとりました。
久しぶりに八戸時代並みに病院に滞在し、オンコールをうけて、個人的な予定もキャンセルして診療にすべてを注いだ生活でした。

この診療経験そのものもですが、
一連の過程で、病院内で大きな変化を起こすときの根回しや話の持って生き方、ステークホルダー個人の性格を考えて動くことなど多くのことを学びました。
なによりも看護師の大切さ、そして看護師らコメディカルの給料についてきちんと考えたのは初めてでした。
自分の給料については多少考えますが真剣にはあまり考えないし、「なんとか給料あげてください!」とまで考えてことはありません。
これは本当に贅沢なことだったんだ、と気が付いたし、苦労をしらない人間だということを自覚しました。
第5波のときは「なんとか看護師に手当だけでも!」と思ったし、お金がいかに大事なものか感じました。
このことは、
・社会全体としてエッセンシャルワーカーにpayしないこと(一時期流行ったけど、すっかり誰も言わなくなりましたね)
・医師と他医療職の不均衡
・看護師(等)業界自体の構造上の問題(ピラミッド型に昇進しない平坦な組織構造)
・「男が働くもの」+「看護師は女性の仕事」という古い観念の組み合わせ
など、複数の原因で、看護師らコメディカルの給料は不十分なものになっているのだと思います。

入職当初は半年でこの病院から八戸に戻ろうと思っていましたが、
コロナ体制の残渣があるなか、自分一人スーッとやめるわけにもいかず、
十分なお給料も与えられない中、スタッフに無理をさせていることを考えれば、
それを取り残して無責任に去ることなどとてもできず、10月からもそのまま館山に残ることとしました。それでいまも館山にいます。

結局、コロナ第6波に向けた非常体制の準備を考えても、
日常から、理想の「地域に貢献する救急センター」を作り上げるにも
研修医や他科医師、看護師らへの教育やみんなが仕事をしやすい環境づくりだと感じています。それが一番難しいのですが。

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佐々木暁洋
地域医療、健康格差に興味をもつ救急/集中治療医