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スタージュン

そうだ、海を見ながら読書をしよう。

昼過ぎ、ふと思い立ち運転席へ座る。

最近、いつもお世話になっている理容室のお兄さんに勧められるがままに聴き、すっかりハマってしまったアイドルのCDをだだ流し揺られること1時間半。

僕の住んでいる市から、丁度、これ以上進むと急激な人口密度の低下があろうという境目の地点に存在する、割りと大きな道の駅に辿り着いた。

理想を言えば、何かこう、ひっそりとした、自分だけの海岸線のようなものを背景に感傷に浸るつもだったが、流石は三が日と言うべきか。

ようやく人気のないベンチを探しだし、めくること1ページ、日本海の風は二つの意味で冷たかった。

すぐさま車に戻り、地味な環境破壊を行いつつ、続きに目をやる。

いつしか気取って買い、インテリアと化していたアメリカの短篇SF。

孤独を感じた宇宙のどこかに住む生物が、宇宙の誰かに向けて「メッセージの入った円盤」を流し、それを受け取った地球の女性もまた、その数奇な運命から孤独に追いやられていくといった話だった。

砂浜に降りて、瓶詰めの手紙でも探そうかと思ったが、寒いので止めた。

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