東大受験の思い出 2

正常な人生に居心地の悪さを覚える性分のせいで人生を棒に振ってきたと思う。高校時代は自分の人生の中では最も正常な時期で、充実した時間だったはずだが、思い返してみても高校時代は人生の中でぽっかりと穴が空いた時期だったと感じる。

世間知らずな自分は高校に入学しても次の大学受験のことなど全く考えることなく過ごしていた。高校は中学受験組の内部進学者が多く、東京23区内に実家がある人たちが多かったはずだが、自分はその意味を全く知らずに生きていた。自分は郊外の団地育ちだというのに。

中学受験組は次なる大学受験に当然備えていたと思う。鉄緑会やSEGなんて単語を聞いても自分にはピンと来なかった。ただ何となく高校時代を過ごしていた。それでも十分に充実した毎日で、人生で初めて何の恐れもなく過ごせる時期だった。中学時代はとにかくクラスのヤンキー達が怖くて、常に萎縮していたが、高校は難関校というだけあってそういった人たちはいなかったので、自由に過ごせたのだと思う。

高校時代はそうやって平穏に2年間が過ぎていった。

そして高2の冬になった。ここで初めて大学受験というものを急激に意識するようになった。今までは大学進学のことなんて考えたこともなかった。さすがに受験をしなければ大学に入れないことくらいは知っていたが、自分にとっては現実味に乏しい出来事のように思えていた。

高2の冬には高校生にとって初めての東大模試がある。高校教師はクラスのホームルームで当たり前のようにそれを伝えた。どうやらクラスのほぼ全員が受ける模試のようだった。急に狼狽したのを覚えている。東大?自分の人生に東大なんて単語が入り込んでくるなんて考えたこともなかった。しかし、意外にも自分はそこに近い場所にいるらしかった。東大模試を受けるということは、東大を受験するということだ。

高2の冬に東大模試を受けた。結果はD判定だった。

かなりショックだった。今思えば大学受験のための勉強なんてしていなかったのだからその程度の成績になるのは当たり前なのだが、高校受験を経て自分は勉強ができると思い込んでいた。

現実を見せつけられて、世間知らずな自分はここでようやく大学受験というものを意識するようになった。受験本番まであと1年。D判定という文字を見て、東大に行きたい、と初めて思った。

続く

明日を生きるモチベーション