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倒叙ミステリーの傑作 東野圭吾「容疑者Xの献身」
触れてこなかった超有名作品
流行りものにはすぐに飛びつく質なのだが、手を出す前にあまりにメジャーになってしまうと触れるのをためらってしまう。
おかげで国民的アニメ「となりのトトロ」なんかもまだ見ていない。
東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」もそうした作品の1つだった。
テレビドラマでは福山雅治さんが演じていた天才物理学者(通称ガリレオ)が活躍する倒叙ミステリーというくらいの予備知識はあった。
けれど、ドラマや映画はもちろんのこと、書評にすら触れていなかったので、完全に白紙の状態でページを開いた(電子書籍だけど)。
フェアな倒叙ミステリー
アパートで一人娘と暮らしていた女性が、しつこくつきまとってきた元夫を殺害してしまう。隣で暮らす高校の数学教師が事件を知り、ひそかに想っていた女性を救おうと犯罪の隠ぺいを画策する。
完璧に見えた隠ぺい工作だが、警察の相談を受けた天才物理学者・湯川学がなぞに挑み、真相にたどり着く。
読み終えて思ったのは、ミステリーとして生真面目なくらいフェアな作品ということだ。いや、ほんと。伏線があちこちに張り巡らされている。
倒叙ミステリーなのに犯人の意図が最後までわからないという謎解き要素があり、読んでいてわくわくした。
天才数学者の孤独
そして、何より素晴らしいのが、容疑者の人物造形だ。
孤高の天才数学者。学者としては不遇の時を過ごし、高校の教師をしているが、ガリレオの大学時代の同級生でお互いを認め合った存在だ。
完全犯罪を成し遂げるための行動が徹底している。その根底にあるのが隣人女性への一途な想いだ。そんな人間いないだろうと思いながらも徐々に感情移入していき、最後は共感できた。
まさにタイトル通り、「容疑者」が真の主人公となっている。
多くの人に読まれた本が必ずしもいい作品というわけではないと思うが、「容疑者Xの献身」は傑作と断言できる。
食わず嫌いで手を出してこなかった「ガリレオ・シリーズ」を読んでみようと心に決めた。
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