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不和とふわふわとカリカリ

マックグリドルが好きだ。

老若男女みんな好きに決まっているので説明の必要は無いと思うが、これはマクドナルドの朝マックで提供されているパンケーキにソーセージパティを挟んだメニューである。
メープル風味の甘く柔らかなパンケーキにパティの塩気と脂が合わさって、一口齧ればカッと脳が開くように覚醒する。口にすればたちまち生きる気力が湧いてくる逸品。この文章を打つ今も、その味を思い出して唾液が止まらない。油分が多いのでホットコーヒーをお供に食べるのが良いと思う。

今朝、目が覚めると身体がそれを求めていた。
しかし、私の家からマクドナルドは少し距離があるので、急いで着替えて出発しても朝マックの時間に間に合うか微妙なところだ。

仕方ないので、似たようなものでグリ欲を満たそうと作ったのが上記の見出し画像。バターとメープルシロップをかけたホットケーキと、ソーセージパティの代わりにベーコンを添えたもの。なんとなくアメリカの朝食って感じがする。
これを作りながら、私は幼い日のことを思い出していた。

小学生の頃、初めて自分でベーコンエッグを作ってみようとキッチンに立った時のこと。土曜日だったのでリビングには両親が揃っていた。コンロにフライパンを乗せて火を点け、ベーコンを入れた所で後ろにいた両親に何気なく声をかけた。
「カリカリにしたいんだけど、どうやるの?」
「強火で一気にやるんだよ」
と、母が応える。
「いやいや、弱火でじっくり焼くんだよ」
と、父が訂正をする。

そこから背後で強火だ弱火だの口論が始まり、段々と日頃の不満や昔の出来事などに飛び火し、本格的な言い争いへと発展していった。私は焼き上がったベーコンエッグを食べながら、怒号が飛び交うリビングで行き場なくテレビを眺めていた。
その時に流れていたのが王様のブランチで、はしのえみさん演じる“姫様”のお買い物コーナーをやっていた……なんてことは覚えているのに、肝心のベーコンがカリカリに焼けたかは思い出せなくて不思議だ。

二十年ほど前のことだが、未だに思い出すということは印象に残っていたのだろう。あまり良い思い出ではないので、苦々しい気持ちで焼き上がったホットケーキを口にする。

うっっま。

まだベーコンは食べていないのに、同じ皿に盛ったことでホットケーキに塩気が移っていて美味しい。合わせて食べればもっと良いに決まっている。ベーコンと共に次の一口を急いで口へ運ぶ。

うっっっっま!

甘味と塩味のバランスは然ることながら、ふわふわとしたホットケーキとカリカリに焼いたベーコンを噛み砕く食感のコントラストが心地よい。こんな最高の組み合わせ、もっと早く作れば良かった。

食べ終わる頃にはすっかり機嫌が良くなっていた。
どうやら、嫌な思い出には脂質、糖分、炭水化物が効くようだ。これを読んだ皆さんもお試しあれ。

それはそれとして、いくら美味しくてもマックグリドルとは別物だったのでグリ欲は増すばかりだ。
明日こそは朝マックへ行こうと思う。

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