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チーズをもてあます

よく他人から「写真いいですか?」と言われることがあります。

もちろん一緒に写真を撮ってという意味ではなく、カメラマンになってという意味で。

例えば、観光地で写真を頼まれたとします。
相手が親子連れやご年配の方なら、分かりやすく「はい、チーズ!」と言ってシャッターを切る。日本語が不得意そうな海外の方に話しかけられたら、ひとまず“OK! Say Cheese!”などと言ってみる。

かなり親しい仲間内で写真を頼まれた時だったら、
「本日はよろしくお願いします! あ、いいっすね、 すっごい可愛い! ちょっと一枚脱いでみようか?」みたいなダルい小ボケを入れつつ、勝手にパシャパシャ撮っていくでしょう。

難しいのは、それほど親しくない同世代以下の方に写真を頼まれたときです。
先日、ドラマのレギュラーエキストラで一緒だった少し年下の俳優に「すみません、ささきさん写真お願いしていいですか?」とスマホを渡されました。
どうやら、SNS用の写真が欲しいようです。

数日間現場で一緒だったので雑談を交わせる程度には仲良くなれました。でも、小ボケを挟みながら適当にシャッターを切る勇気はありません。
なぜなら、私は内弁慶なので。
そうなると、私の引き出しにはチーズとCheeseしか入っていない訳で。でも、それが急に古臭く思えてきました。もっと今っぽい掛け声はないのか?
自信満々に古びたチーズを引っ張り出して、年下にダサいと思われるのは御免です。
なぜなら、私は見栄っ張りなので。

迷った末に、「はい、撮りまーす!」みたいなことを言ったような。無難だけれど、いつシャッターを切ったのか分かりにくい気がします。

他の人は、こんなとき何と声をかけるのか? 
思い起こそうとしても、驚くほど記憶に残っていませんでした。理由は火を見るよりも明らか。
私はnoteにもTwitter(現:X)にも、俳優としては珍しいほど自分の写真を載せていません。そもそも、誰かに写真をお願いすることが無いわけです。
当然、掛け声のトレンドも更新されないまま。

これを機に、積極的に誰かに写真を撮ってもらってSNSに上げます! となれば良いのですが、私の性格からすると難しいかも知れません。
なんせ内弁慶の見栄っ張りなもんで、頼み事をするのがめっぽう苦手で……
宣材写真は別として、SNSにあげる用なら自撮りの方が気楽なんですよね。

とはいえ、他人から写真を頼まれるのは全然平気。これからも、知人・友人から知らない人まで、誰にでもシャッターでも切る所存です。
掛け声に関しては、もうチーズ一本で勝負していくしかありません。
「うちのメニューは先々代からコレだけなんです」と自信を持ってお出しすれば、老舗の奥深い味わいが生まれることでしょう。

いつか、これを読んでいるあなたにも自慢のチーズを振る舞う日が来るかも知れません。
どうかその時は、存分にご堪能下さい。

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