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友達には言わない家族のこと。

私の実家は、九州のかつては炭鉱が盛んだった場所にあります。

一人っ子なので、実家には、今は親が2人で住んでいて、隣には高齢の祖母が1人で暮らす家もあります。

祖父は私が生まれる前にガンで亡くなりましたが、地銀のお偉いさんだったようです。その祖父が言うには、地域で信頼を得るには、土地が必要だったらしく、私や父が把握できていない私有地(田、耕作放棄地、山)がたくさんあります。

正直言って、後のことを考えていない身勝手な行為です。自分で管理できない土地はもつ必要はないと思います。


また、祖母の話に移りますが、祖母が一人暮らしを始めたのは、去年の6月からです。同居していた叔父が脳出血で急に亡くなりました。

叔父は、詳しい検査はしていませんでしたが、おそらく吃音症と知的障害もしくは学習障害をもっていました。祖母は回りの目が気になり、自治会内で弱く見られないようにするため、叔父の障害を認めるような行為はしたくなかったようです。私が、叔父と回りの大人には違いがあると気づいたのは、2008年のリーマンショックで不景気になり、叔父が解雇されたときです。笑いながら仕事から帰ってきた叔父は、祖母に3桁の足し算引き算が書かれた問題用紙を渡し、クビになったと言いました。当時小学校低学年の自分にもできた計算を、叔父は全くできていませんでした。あの時の衝撃と祖母の悲しそうな、泣きそうな顔は今でも覚えています。そのため、田舎暮らしに必要な運転免許証も持たない叔父は、解雇後職につくことはありませんでした。

叔父には、偏食、1日の生活リズム、自分のものへのこだわりがとても強く、祖母と毎日のようにケンカをしていました。叔父は祖母の前では強気で言いたいことを言っていても、親戚には良い顔をします。たまに、親戚からお金をもらって、それでパチンコに行ったり、食べたいものを買ったりしていました。お金をもらったことは、祖母には言わないので、これがバレるとまたケンカをしていました。一番あきれたのは、去年の4月に、病院の予約時間を破ってパチンコに行ったことです。私は母や祖母と、叔父が病院に来るまで、1時間ほど待っていましたが来ず、最終的に予約の4時間後病院を訪れ、多くの人にとても迷惑をかけていました(当時、コロナで危険とされていたパチンコなのでなおさら)。また、叔父は千葉県で働いていた30代のとき、仕事中に事故を起こし、重症を負いました。叔父は一命を取り留めましたが、一緒に作業をしていた方は亡くなったそうです。また、その方には家族も居たそうで、この事柄はいまもなお祖母を苦しめています。

叔父の姿を見て、自分は大人になって、絶対にこうはなりたくないと何度も思いました。いつも口先だけで、何もできず、祖母に迷惑しかかけない叔父が私は嫌いでした。

私の父も、叔父のことが嫌いで、叔父の「俺、もうすぐ死ぬけんな、お母ちゃんをよろしく。」という言葉に、「そんならさっさと死ね。」と返すほどでした。娘の前でこんなことを言う父に、びっくりしました。父は、小さい頃に叔父のことをバカにし、相当な仕返しをされたことから、関係が悪化したと祖母は言っていましたが、本当のことは怖くて聞けていません。


祖母と叔父は、いわゆる8050問題の当事者でした。祖母の口癖は「○○(叔父)が生きているうちは、死んでも死にきれん、死ぬわけにはいかん。」でした。

そんな問題だらけの叔父があっけなく、亡くなりました。前日に珍しく身体の不調を訴えた叔父はすぐに入院し、明け方、病院で息を引き取りました。入院していなかったら、自分の部屋で息を引き取り、おそらくそれを祖母が発見し、警察も来て調査されていただろうと思います。祖母にそんな思いをさせずに、叔父は亡くなりました。生前はあれだけ迷惑をかけたのに。

叔父の葬式には、友達やかつての仕事関係者などが一切来ず、親戚や自治会の参列者のみで行われました。コロナだから、親戚中心の葬式にしようと皆言って、うやむやになりましたが、叔父には亡くなったことを連絡する友達すらいなかっただろうと私は思っています。

叔父は、生きているうちに、したいことができたのだろうか、結婚して家庭を持ちたかったのだろうか、障害の検査を受けていれば別の人生が送れたのだろうか、、、など、私にはこの先ずっとわからない、多くのことを考えてしまいます。

その人の人生がどうだったのかは、その人にしかわからないので、叔父の人生を評価するつもりはありません。しかし、田舎で亡くなっていった叔父のことを誰かに知ってほしかった。そして、叔父が生前関わった人やその方の血を引く人が、この文章を読むということが起きるのを願っている自分がいます。


「ふーん、そんな人もいたのね、ごくろうさんでした。」ぐらいでいいので、何か感じて貰えれば幸いです。


つたない文章ですが、読んでいただきありがとうございました。

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