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夫よ、君はどこへゆく。

「アタクシに、車を一台買ってくださらない?」

休日に愛犬ポッキーの散歩を夫婦でしていた際に、夫がなぜか貴婦人のごとく私に話しかけてきた。
TEH鬼夫神。

え? 車? 今の車の買い替え?
まだもうちょっと先でいいはずだけどなぁ。お前は家計を火の車にする鬼なんか? なんて思いながら、私は、どうしたのよ夫人、と話の意図を確認した。

夫は冬の時期を除き、基本的に毎週釣りに行くことが多い。海釣り。
どうも、釣りに行く際に奥まった場所に入りたいらしいが、現在所有のミニバンでは入っていけないとのこと。やっすいボロいやつでいいから、週末用に軽トラか何かを買って欲しいとの申し出だった。

我が家は、基本的に全ての決定権を私が握っている。
そのため、私がゴーサインを出さなければ、大きい買い物は難しい。
とはいえ、基本的に理由が明確であり、予算に都合がつけば買うことが多い。私はザルな猿なのだ。

ということで、車両購入にかかる費用と維持費を試算して、改めて交渉するように伝え、今回の話は終止した。

そして、そのまま川っぺりを散歩する私たち。
私が温泉に行きたいな〜と話すと、夫が突然、

「ドラム缶欲しい」と言い出した。

ドラム缶? なぜ?
そう思った私は、急にどうしたのよ夫人、と話の意図を確認した。

理由は明快。ドラム缶風呂に入りたいとのこと。
庭で火を起こし、テントを張り、ドラム缶で湯を沸かし、外で裸になり、ドラム缶風呂に入りたいんだと。

きっと息子たちも喜ぶよ!
二、三万でドラム缶風呂、買えるって!

お、おうよ。
そ、そうだな。

私には全く魅力的には聞こえないが、夫は目をキラキラさせている。
ボロい軽自動車に、ドラム缶。
彼にはこれがキラキラと光って見えるのだろう。

私は彼がどこに向かって進んで行くのか、これからも見守っていこうと思う。


ちなみに夫の好きなテレビ番組No.1はTHE鉄腕DASHである。
目指すところは、きっとそこなのだろう。


「ねえ、アタクシに島を一つ買ってくださらない?」


と、言い出す日がくるかもしれない。





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