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D2Cとは「顧客との双方向のコミュニケーション」が本質かもしれない|オイシックス・ラ・大地株式会社の執行役員奥谷孝司氏インタビュー記事を読んだ感想

こんにちは、さるこじといいます。

化粧品OEMという仕事柄、D2C(っぽい)会社さんとの付き合いは非常に多いのですが、私の社内でも、あるいは実際にD2Cビジネスをしているクライアントさんの中でさえ、D2Cという言葉は「なんとなーくわかったつもり」で使われていることが多い単語だと感じています。

少し前の記事ですが、オイシックス・ラ・大地株式会社の執行役員でCOCO(Chief Omni-Channel Officer)を務める奥谷孝司氏のインタビュー記事がD2Cへの理解が深まる良記事でしたので紹介します。

D2Cって言葉は知っていたけどよくわからない、という方の手助けになれば幸いです。

そもそも、D2Cの定義ですが一般的には

D2Cは、メーカーが自社で企画・製造した商品を、自社のECサイトを用いて直接消費者に販売する仕組みのこと。直接販売のひとつ。(Wikipediaより)

と言われています。

しかし、これを聞いたとき
・もともと自社ECだと集客の問題等があり、運用コストに対してメリットが見いだせずZOZOTOWNのようなプラットフォームECが発展したんじゃなかったっけ?
・店舗かECかの違いだけで製造小売業(SPA)と変わらなくない?
・というか卸・小売りを飛ばしたビジネスモデルは結構昔からあるよね?
と、疑問が浮かびました。

また、D2Cのメリットとして、
①思想を伝えやすい
②顧客との関係構築がしやすく、ブランドロイヤリティを高めやすい
③顧客データの収集がしやすい
とも言われていますが、これもSPAのメリットと変わりませんし、楽天やAmazonへの出店でもやり方によって上記のメリットは大方享受できるのではないかと感じていました。

「D2C」は新しい概念ではなく「顧客との関係性」だ

「D2C」という言葉は新しいが、新しい概念ではない。「顧客との関係、つながり」という意味で捉えれば、本来は規模や新旧関係なくメーカーもリテールもやらなければいけないことだ。(中略)これまでメーカーもリテールも、プロダクトを作り、プライスを決め、プロモーションを実施して、販売する場に並べるという、フロー型マーケティングを良しとしてきた。しかしそれは、顧客との関係を疎かにしてきたとも言える。その対極にある、顧客を理解し、関係を構築し、ブランディングをしていくという動きが、新興のスタートアップを中心としたD2Cブランドという形だと理解している。

こちらの内容をもとに、「D2Cとは顧客との双方向のコミュニケーションを、製品開発・マーケティング・セールスに活用すること」と考えてみると上の疑問がすっきりとしました。

例えば、SPAとの違いですが、SPAはあくまで流通経路を変えることでコストカットし良質な製品を低価格で提供することが最大の特徴です。
一方D2Cは卸、小売を省く主な目的はコストカットではありません。
(スタートアップの規模の場合、卸、小売を飛ばすと顧客獲得単価がむしろ高くなるという指摘もあります。)
顧客とダイレクトにやりとりをし、双方向のコミュニケーションを取ることが最大の目的ではないでしょうか。

また、Amazonや楽天などのECプラットフォームを挟むと、顧客との「双方向の」コミュニケーションはかなり難しくなるでしょう。

大手もD2Cに参入すべきか

個人的にはここが一番興味があります。
もともとD2Cは、スタートアップが大手メーカーに対抗するために発展させてきたビジネスモデルで、実際に大手企業の立場を脅かすほどの企業がいくつも出てきています。
これに対抗するために、大手もD2Cをやるべきなのでしょうか。

D2C的要素はどんな会社も持っている。商売は売り手と買い手の関係であり、売り手は買い手にどうつながりたいかが基本だ。買い手とつながりながら行うビジネスは非効率的とされてきたが、それもデジタルによって改善されつつある。顧客と本気で向き合うには勇気が必要になるし、D2Cでは莫大な利益を得られないかもしれない。しかし、D2Cの手法を学び、顧客との関係性という視点をビジネスに取り入れていくことこそが、メーカーやリテールのデジタルトランスフォーメーションであり、オムニチャネル戦略の目的でもある。

記事では、「大手が取り組むには難しい部分もあるがD2C的な要素はどの会社も持っており顧客とのコミュニケーションは模索していくべきだ」と述べています。

私はマーケティングの大きな目的は、大手企業は「シェア」の最大化であるのに対し、D2Cのスタートアップは「LTV(顧客生涯価値)」の最大化であると考えています。
大手企業の場合、LTVの観点も大事なのですが、やはり瞬間瞬間のシェアを追っていかないと巨大な組織を維持するための売り上げが確保できません。
D2C的な双方向のコミュニケーションは「シェア」を追っていくには必ずしも効率的な方法とは言えず、大手企業は中々取り組みにくい部分はあると思います。

しかし、これまでのマス的なマーケティングからone to oneのマーケティングに移行してきている現代では、大手ならではの顧客とのコミュニケーションを模索していく必要があるのではないかと思いました。

ちなみに化粧品分野で大手企業のD2C的取り組みで良いなと思ったのは

・アテニア(ファンケルグループ)のファンコミュニティ

→大手でも顧客とのコミュニケーションが取れる好例

・資生堂のオプチューン

→顧客とのコミュニケーションをAIに一任

だったのですが、オプチューンはサービスを終了しているようですね…
面白い取り組みだったので、より進化させた形で再始動してほしいです。

【参考】

こちらの記事では

D2Cというのは、トヨタやSONYのような巨大な製造企業が流通を飛ばし、消費者に直接販売することではなく(もしそうなら、AppleはD2C企業である)、硬直化しイノベーションが産まれることが期待できない巨大企業と、自由な発想と機敏な動きで新しいことにチャレンジするスタートアップなどの中堅企業、あるいは、ネットワーク時代の卓越した個人事業主などの、イノベーションを生み出す「対立的関係性」を指すことがその本質であるというのが私の視点である。

と、D2Cは大企業とスタートアップの「相対的な対立関係」が本質であると述べています。
この考え方でいくと、当たり前ですが大企業はD2Cを実践できない、ということになります。

いずれにしても、流通飛ばし=D2Cではない、というところは共通した認識ですので、D2Cの定義をもう一度考えてみる必要があるなと感じました。


では。

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