見出し画像

第0章 00 はじめに

 皆さんこんにちは、加藤寛之です。数ある記事の中からこのお話にたどり着いて頂き誠にありがとうございます。

 このお話は、基本的には今から社会に出ようとしている学生や社会に出て5年未満の方、若い公務員の方々へ向けた、私からのメッセージです。

 約四半世紀、日本全国の色々なまちと関わり、まちに具体的な変化を起こすために試行錯誤する中で感じた都市計画に関する新しい考え方です。

 しかし、これからの日本社会を楽しく格好良く暮らしていくためのエッセンスにもなる内容なので、現状に違和感を感じている多くの方にとっても、お役に立つようにという思いを込めて書きました。

 さて、「都市計画」というと、一般的には道路や公園、河川や港湾、公共施設といったハードのイメージがあると思います。

 しかし私自身は、建築を学んで職業にしてきたのではなく、土木をやってきたわけでもなく、まちに新たなモノをつくるというよりも、コトを仕掛けるような仕事をしてきました。

 コトを仕掛けることで、エリアの期待値を高める。まちのハード面は何も変化しないけれど、じっくりじっくりまちの変化を呼び起こす、カンフル剤というよりは漢方薬のような取り組みです。

 そもそも、何かを新たにつくる、つまりハードを扱うというのは、とてもリスクが高いといえます。大規模な再開発事業ではなく空き家や空きビル等の有休不動産を活用したリノベーション事業といえども、例えばひとつの店を作るにしてもお金も時間も結構かかるし、多くの分野の人間が関わることになります。

 たくさんのリソース、つまりヒト・モノ・カネ・時間・情報等といった資源を投入する必要があるということは、その大きな投資を回収する必要があるのでリスクが高いわけです。もちろん、そのことは公的な資金でも同様です。

 これまでの日本、特に20世紀の都市計画ではどんどんモノを作ってきました。戦後復興から高度経済成長と続く中で公共事業としての都市基盤整備が必要であったからですが、その後の安定成長期においても多くのハードを作ってきました。

 そして現在の日本は、分かりやすく表現すると、これまで作ってきたハードが使われない状態で困っているという状況に直面しています。都市の中でビルがまるごと空き家になる、郊外のショッピングモールもまるごと使われなくなる。
 そんな大きなものだけではなく、昔ながらの商店街も空き店舗だらけになっていたりします。

 右肩上がりで成長してきた時代にたくさん作ったハードが使われずに溢れかえっているのが現在の日本です。ハードは充分ある。でも使われない。

 21世紀を迎えて20年以上経ちますが、では何が今の都市計画に必要なのか。それは端的に言えば、ハードを使いこなす「ソフト」です。

 溢れかえったハードをどうすれば使いこなすことができるのか。そこが問題。そのため、ハードを造る都市計画の話ではなく、ハードの中身となるソフト面はどのような考え方でつくっていくのか?という話を展開していきます。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?