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ユネスコエコパークの日に向けて。持続可能な生態系とは?

ゆるふわ日記にようこそ、サルタックの真衣です。先日のサルタックセミナーにお越しくださった皆様、ありがとうございました!我々サルタックの原動力となる畠山とネパールで活躍するディプさんから、サルタックの熱意と友情を感じてもらえたのではないでしょうか。また、11月5日にはJICA関西で同じイベントを開催しますので、関西方面の方はぜひそちらにお越しください。

一方の香港では先日、野生のイノシシが、街中のフラワーマーケットに現れた!というニュースがありました。人の行き来が多い賑やかなエリアということもありびっくりしましたが、日本でも昨今耳にする話みたいだな、と思いました。そこで、生態系の保護をキーワードに少し調べてみると、「国際生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」というものがあり、11月3日は、「国際ユネスコエコパークの日」なのだそうです。ということで、今回のブログでは、ユネスコエコパークや生態系の保存と人間社会の共生について、そこはかとなく考えてみたいと思います。

国際ユネスコエコパークの日

11月3日といえば日本では「文化の日」ですが、「国際ユネスコエコパークの日(International Day for Biosphere Reserves)」でもあるようです。あまり聞いたことがないですが(私は初めて知りました)、生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)自体は、「生物多様性の保全、生態系の回復、自然との調和を図る」ことを目的に1971年から推進されている取り組みだとか。ただ、「国際生物圏保存地域の日」がユネスコ総会で決定されたのは、2021年。今年が2回目のユネスコエコパークの日なのだそうです。

特に興味深いなと思ったのは、世界では約2億7,500万人がユネスコエコパークに暮らしていて、「生態系の保全」だけでなく、「持続可能な自然環境の利活用」をどう調和させるか」ということが前面に出ている点です。ユネスコといえば世界遺産の認定などで有名ですが、「顕著な普遍的価値を有する」自然に価値を置く世界自然遺産とは異なり、「生態系の保全と持続可能な利活用の調和」を評価するのが、ユネスコエコパークという概念で、上記のような野生動物が街中に現れる事態について考えるうえで、参考になりそうです。

日本で野生動物が出現するのは

ユネスコエコパーク、日本ではどんなところがあるのでしょうか。文部科学省のホームページによると、日本には南アルプスやみなかみ、屋久島などで10か所が登録されています。そのうち1つに、私の地元に隣接していることに気づきました。そこでも、野生動物の食害対策を含めた人間と自然の関りがテーマの一つになっていました。

昨今、日本でも、野生のクマやシカ、イノシシが市街地で目撃されたという話題をよく耳にします。少し調べてみても、「野生動物の市街地徘徊」として、ニュースや各自治体での対策などがいろいろと出てきます。私の地元でも、子どもの頃に聞いた山肌の畑が荒らされた、という噂から、最近では家のすぐそばの畑までやってきた、という危機感に変わっていて、農作物を守るために金網の柵を設営する必要に迫られています。時代の変化に応じて色んなスキルが必要になるって、こういうことでもあるんだな、と妙に感心しました。

私の地元の場合、イノシシなどの動物が人家に近づく理由は、山の切り崩しや開墾などで生活圏を奪われたり縮小されたりした動物や、温暖化で植生が変化し十分なエサを確保するのが難しくなった動物が、食料を求めて里に下りてくる、ということに加えて、高齢化等による猟師(天敵?)の減少、ということも要因だと言われています。自然環境の話だけではなく、人間の関り方も生態系のバランス維持に影響しているため、野生動物との持続可能な共存を考えるうえでは様々な視点が必要なんだなと、改めて感じます。

香港で出現する野生の動物

一方で、林立する高層ビルが連想されがちな香港では、動物が街中に現れるなんて珍しいニュース、と思われるかもしれません。(私はそう思っていました)が、以前紹介した通り、香港は意外と自然が豊かで、東京23区の約1.8倍という街の規模感から、自然と街の距離がとても近いのが特徴です。都市部または埋立地(Urban or Built-up Land)は香港全体の25.4%しかなく、24の自然公園と22の特別区などの自然保護区域が面積の40%を占めています。

この自然保護政策の甲斐あってか、学校の近くでサルの群れを見かけるだけでなく、イノシシに遭遇することがありました。郊外の家に帰宅する途中、バスを降りて歩いていたら、道端に大きな犬が…と思ったら、イノシシでした。猪突猛進のイメージから危機感を感じ、できる限りの静かな速足で通過したところ、イノシシの方は、道端で何かを食べあさっている様子で何事もなくやり過ごしてくれました。その後も度々、夜に遭遇することがあり、きっとこんなにイノシシに遭遇するのは、我が家の場所が街中から外れていてチョウの保護区域のすぐそばという立地に因るものだろう、と思っていたら、上記のニュースです。

よく見てみると、どうやら、香港ではここ数年、野生のイノシシが街中に出てきて住民への被害が問題になっていたようで、2021年11月からは、捕獲/駆除プログラムが始められたそうです。2023年10月までの2年弱の間で捕まえられたイノシシは687頭。1日1頭に迫る勢いと思うと、驚きます。

香港政府によると、都市部や住居エリアへの野生のイノシシ出現の主な原因は、人間によるエサやりなのだとか。そこで、2022年にエサやり禁止区域を香港全土に拡大するとともに、罰金金額が引き上げられ、10万香港ドル(約20万円)以下の罰金と1年以下の禁固。これは従前の10倍の金額で、香港政府のイノシシ対策の本気度/危機感が感じられます。個人的には、違法の危険を冒してまで、イノシシにエサをあげるという状況があまり想像できませんが。。。

ともあれ、香港では自然の保護区域がきっちりと定められているため、市街地に出現してきた場合には、安全確保のために駆除の対象になる、餌付けをしない等、野生動物の生息域と人間の生活圏をきっちり分けて、共存していこうとしていることが分かります。


以上、野生の動物、特にイノシシとの共存の難しさを、つらつらと考えたゆるふわ日記でした。

いつの時代も、持続可能な生態系、自然/動物と人間社会の共生は、大きなテーマの一つなのではないかと思います。

ようやく涼しくなって山の散策も楽しめる文化の日に、国際ユネスコエコパークの日でもあることを意識して周りを見てみるのも、面白いのではないでしょうか。


(冒頭と最後の写真は10月の日本にて。撮影:荒木紀理子さん)

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