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7月読書まとめ

レキシントンの幽霊 村上春樹

10年以上ぶりの再読。「緑色の獣」はあれかな。シェイクスピアの「オセロ」の「嫉妬という名の緑の目をした怪物、あれは人の心を食い物にする」ってやつの怪物をモチーフにしてるのかと思った。どこから来たのかわからない、緑色の醜い獣。それをギタギタに想像で虐殺する。できれば私の嫉妬心もそうやって殺してしまいたいわ。最後の方は獣がなんだか哀れで、虐殺される獣(嫉妬心)に同情してしまう物語だった。でも「オセロ」の嫉妬心がモチーフなんだとしたら、愛する人を殺してしまう前に、心を無にして獣を殺すのが正解なんだよ、きっと。

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愛の宿 花房観音

「愛の宿=ラブホテル」ってタイトルも好き。きっと仏教を意識して「愛」という漢字にしたんだろうなって思った。仏教においての「愛」って良い意味はなくて、どちらかというと渇愛や執着なんかの煩悩で、捨てるべきもの。連作短編6編すべてに共通することだけれど、思い通りにならないと憂いたり、失うのではないかと恐れるような愛は結局は煩悩の一つに過ぎないとあらためて思った。反対に私が思う愛とは、慈悲という言葉に近いのだろうと気づいた。この物語は人間臭さや人間のどうしようもない部分が描かれていて読み応えあり。

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星へ落ちる 金原ひとみ

「星を見上げていると、自分がその星に落ちていきそうな気がしない?」彼がそういう。この話はそれに尽きるように思う。彼には強い引力があるのだ。私は彼という星に落ちてしまった。そこに降り立ってしまうと、地球上の物体が重力によって、こうして地面に足をつけていることが必然なように、離れることができない。同じように彼という星に落ちたゲイである僕もずいぶん前から離れることができなくなっていた。もしも地球の重力から自分が解き放たれたらなんて考えるだけで恐ろしい。気が狂いそうだという葛藤の物語。私の元カレである俺が、宇宙のチリが大気圏に突入して激しく燃えるように消えていく姿も哀れ。


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