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[架空旅行記]ミスター・クランペットによる中央省庁区の旅 その2(光王庁立博物水族館編)

※注意 これは「架空」の旅行記です。様々な事情により、記載した文章・写真などなどが「無難なもの」に置き換わっている場合があります。

 本日は光王庁立博物水族館の見学です。まず建物ですが、光王庁から車で十分くらい(と言っても敷地内なんですが)のところにあるばかでかい白い四角い建物。それが光王庁立博物水族館です。
 中央省庁区の建物はみんなばかでかいのか、というと、まあ一般の建物はそうでもないんですが、リラ教会が絡んだ建物はだいたいみんなでかい。巨人のための建物かってくらいでかい。天井も高い。ここもご多分に漏れず、エントランスからして広大です。

 説明しよう。光王庁立博物水族館とは。

 もともとは光王庁が設立した研究施設です。博物水族館、と言ってますが、実質博物館も水族館も美術館も動物園も科学技術館も兼ねています。図書館も併設されていて、リラ教会の知の殿堂にふさわしい質と量の資料が収蔵されています。集める労力と維持する経費を考えると気が遠くなりますな。

 ……宗教って儲かるんだなあ。
 という素朴な感想はさておき。

 余談ですが、実際には政教分離……はもう国の成り立ちからしてどうしようもないとはいえ、リラ信仰者以外からも取ってるのに宗教行事やら施設やらに税金を使うんかとか、いろいろ議論も問題もあって、今ではほとんどの施設は(宗教施設以外も)個人からの寄進、という形になってます。いわゆる貴族の義務(ノブレス・オブリージュ)ってやつ。内外にその家の威信を示し、光王選定会議で有利になろう、っちゅう目論見もある(ので、やたら建物がでかくなりがち)。
 昨日行ったフォルシウス大聖堂はフォルシウス家からの寄進、ここ光王庁立博物水族館はレイ家からの寄進です。
 光王庁自体はもともとリラの聖地として神殿が建ってたところを、市民の福利厚生のために光の巫女の神託に従って光王が開放した、というのがそもそもの成り立ちなんで、ちょっと事情が違います。

 閑話休題。
 光王庁立博物水族館は、もともとは天魔の生態を研究する研究室でした。天魔っていうのは、生物や無生物が神々の怒りによって変質したもの。その特性は変質前の生物無生物に依拠するところもあります。
 よって、伝統的に聖騎士団(対天魔戦を生業とするリラ教会の下部組織)と関係の深いレイ家が出資して研究施設が作られ、資料として集められたもんの一部を一般公開した、というのがここの始まり。

 そういう成り立ちですんで、やっぱり生物系の資料が豊富。特に水族には力が入ってますが、これはなぜかというと、天魔に変化する可能性のある動物は扱いが難しいから、というのが大きいです。なんらかのきっかけで飼育している動物が天魔になってしまったら、それこそ大変なことになる。水族ならば、最悪水槽から水を抜いてしまえば対応できるし、少々無茶な実験も可能である。
 ということで、建物の半分は水族館が占めることになったわけです。

 見所は二つの大水槽。発見されている魚類の中では(グロス・ディア産の魚も含めて)最大の種であるジンベエザメとか、オニイトマキエイ、ナンヨウマンタなんかの大物から、イワシやアジやマグロまで、100種を超える生き物が展示された水槽と、グロス・ディアの動植物だけを集めて「妖精の海」の風景を再現した水槽が併設されています。
 横幅20メートル高さ7メートルのアクリルパネルを通して見る水槽が両脇にある広場は一番の迫力。20世紀までの人々が見ていた水中世界と、グロス・ディアがこの世に現れてから見られるようになった非現実的な(と私の感覚では思える)世界を見比べることができるという、ぜいたくな空間になってます。

 他にも珊瑚礁を再現した水槽、深海の生物を集めた水槽、クラゲを集めた水槽などなど。研究施設を兼ねているだけあって、ただ見て楽しむだけじゃなく、最新の研究成果を学ぶ場としても活用できるように解説や仕掛けも豊富で、一日じゃとても見切れない情報量です。

 水族館の迫力に押され気味ですが、博物館側の展示もすごい。こちらは風霊戦争以前の発掘された歴史、芸術、民俗、産業に関する資料を主に展示してあります。
 ここの修復技術は一流で、失われた芸術や技術なんかも、ここの研究者のおかげで復活したものもずいぶんあるとか。その成果は実際の産業にも活かされていて、四十年ほど前のピアノの復活を皮切りにして、一般人が芸術を楽しめるようになった土台もここで作られました。

 発掘されたものだけでなく、そこからどうやって技術や文化が復興されていったのか、その足跡を辿ることもできるのがこの博物館の魅力です。

 もちろん、生活や文化に関するものだけでなく、兵器や戦闘魔術の再生も行われています。風霊戦争の再来を危惧する声もありますが、現実問題として天魔の脅威が間近にあるわけなので、致し方ない部分はある、とは思いますが、まあ、実際兵器の展示やそれにまつわる歴史的なあれこれを見ているとぞっとした気持ちになるのも間違いのないところ。

 でもま、それも人間の積み重ねてきた業というか現実として、避けては通れないものなんでしょう。

 そんな感じでいろいろ考えたり楽しんだりしつつ、ここ見学するだけで一週間はほしい、なんて思ってみたりして。

 スケジュールの関係上そうも行かないので、後ろ髪引かれつつ次の場所へ向かいます。


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