光王庁のイメージ

[架空旅行記]ミスター・クランペットによる中央省庁区の旅 その1(光王庁・フォルシウス大聖堂編)

まずはじめに

※注意 これは「架空」の旅行記です。様々な事情により、記載した文章・写真などなどが「無難なもの」に置き換わっている場合があります。

 と、お約束的に前置きいたしまして。一応こちらでは初回なので、自己紹介なるものを少しだけ。

 と言っても、あまり自分自身について語れることは多くありません。とある時代のとある国で公務員的な仕事をしつつ、いろんな世界のいろんな時代を気まぐれに旅する趣味を楽しんでいる一個人です、とだけ。

中央省庁区について

 そんなこんなで、渡航許可がようやく下りたので、死ぬまでにいっぺんは来てみたかったリラ司教国の中央省庁区についに到着したわけです。

 説明しよう。中央省庁区とは。
 まあ、今さら私が語るようなことでもないんですが、ご存知の通り、リラ司教国の首都です。人口は公称200万。『壁』の向こうに広がる無法地帯まで含めると、300万は下らないかもしれない、くらい。まあ、この時代にあっては世界最大の都市と言って良いでしょう。

 中央にでんと構えているのは光王庁。中央省庁区という実に味気ない名前の由来です。リラ司教国の政治経済文化軍事、そして何より宗教の中心地。巨大なお役所で要塞でかつ教会。

 外見的な見た目は……まあ、山ですな。でかい白い針山。尖塔がいっぱいある、どこもかしこも白い、ちょっとした町一つ分くらいはある超巨大な建造物です。いやあ、よく作ったもんだ。

 これ、中に入るとわかるんですが、ファンタジー世界のお城を拡大したみたいな見た目に反して、構造的には積み木みたいな感じです。ピラミッド状に積み木が積んであって、そこに結界発生装置だの魔力探査装置だのを積んだ尖塔が乗っけてある。一番下が一番広くて、上に行くほど狭くなるけど、一番上もめちゃくちゃ広い。
 各ブロックはけっこうきっちり分かれていて、各区画は巨大な白い廊下で繋がれてます。主な交通手段はこの廊下を走るリフト。縦横三メートルくらいの空中に浮いた四角いやつです。通勤ラッシュの時間には台数増やされるんだとかなんとか。

 私が今いるのは、この光王庁の地下です。光王庁地下駅。その駅ナカにあるカフェでこの記事の下書きを書いてます。地上もでかいけどこの地下も相当でかい。リラ司教国の鉄道高速その他もろもろ、すべてがここに集まってるわけです。すべての道は中央省庁区に通ず。名前のせいでちょっと味気ないけど、まあそういうことです。

 私がいる辺りは一般市民にも開放されてるんで、人の出入りは多い。カフェの前もひっきりなしに人が行き交ってます。別の区画には物資の輸送とか僧兵の輸送とか、関連したもろもろの保管庫とか、そういう一般人立ち入り禁止、みたいなとこもあるらしい。さらにはもっと下に天魔の襲来に備えた地下シェルターもあると。
 いやあ、よく作ったもんだ(二回目)。

 地上部分はだいたい下から三分の一が役所的なところ、上三分の二が軍部、経済部、文化部っていうこの国の政治の全部を取り仕切ってるところと、対天魔の戦力である聖騎士団、治安維持を担当してはる光王親衛隊の五つの部門で使ってる場所です。
 上三分の二については、詳しいことはわかりません。事務局とか資料室とか詰め所とか宿舎とか福利厚生施設とかまあ、そういうのの維持管理に必要な施設がぎゅぎゅっと詰め込まれてるらしい、くらいです。

 そのさらに上、お山のてっぺんにあたるところは「光の宮殿」といいます。リラ教会のトップのお二人、光の巫女と光王がおわすところです。宗教行事とか謁見とかそういう特別で形式的なことをするところ。入れる人はもちろん限られてますが、たまにテレビーとかでちらっと見せてもらえることもある。光神リラの威光を示すための施設です。

 光王庁の施設としては、だいたいこんな感じ。でまあ、建物的にも大変面白いところではあるけど、一般人にとっては巨大なお役所なんで、観光的にはあまり見せてもらえるところはない。というわけで、今回は通り過ぎるだけでスルーです。

 で、光王庁の周りの街並みの話。光王庁の東側には貴族街が、西側には商業地区が広がってます。その二つを取り囲むように住宅街。天魔をの襲撃を防ぐための壁。さらに外側に無法地帯。

 貴族街は、光王庁の白くて清潔な建物の延長、て感じの、整然とした場所です。人通りが多くない代わりに監視の目は厳しい。そりゃ光王庁のえらいさんが大勢集まってるとこです。それは仕方ない。面白い建物はいっぱいあるんですが、現役で人が住んでいるわけで、こちらも観光には向きません。スルー。

 で、商業地区。こちらはいろんな階級と人種の人々が入り交じる混沌とした場所。ここはあとで食事時を狙って行く予定です。

 商業地区と貴族街の境目というか、緩衝地帯みたいなところにはフォルシウス大聖堂があります。これが今日の観光の目玉。

 人によってはその世界線に既に存在している「無難な」写真に置き換わってるかもしれません。雰囲気は似てるものが選ばれてるはずなんで、写真は参考までに。

 説明しよう。フォルシウス大聖堂とは。
 名前の通り、フォルシウス一門が建てた大聖堂です。フォルシウス家ってのは、代々神祇官を輩出してきた、レイ家、ゴルト家と並ぶ名門中の名門貴族。光王も代々この御三家から出てます。実質的にリラ司教国の最高権力を握っている一族の一つ、っちゅうことです。

 光王庁の建物自体は、レイ家が中心になって建造したと言われています。フォルシウス家はそれに対抗する形で、この二万人収容できる巨大な大聖堂を建築したわけです(参考数値:パリのノートルダム大聖堂の収容可能人数約9000人)。

 建物の様式は基本的にゴシック様式。そこからキリスト教的要素を引いてグロス・ディア的要素を足した感じ。
 具体的にはガーゴイルの代わりに角の生えたでかい猫みたいな姿のレイリスって霊獣がいたり、グロス・ディアに特有の透明な植物を模したガラス細工が柱に巻き付いてたり。

 こういっちゃなんですが、リラ教会っていうのは基本的にキリスト教の様式を踏襲しているところがだいぶ多いです。「荘重な」建築物をつくるにあたって、グロス・ディアの資料はほとんどが散逸していたから次善の策としてヨーロッパの一番派手な形式が選ばれたんじゃないか、なんて言われてます。真相は闇の中ですが。

 成立の過程はそんな感じですが、こめられてる魂というか、信仰心は本物だなと、見ていて思います。降りそそぐ光やら立ち並ぶ巨大な石柱やら、大きいことは良いことだ、ってわけじゃないですが、やっぱり見る者を圧倒する雰囲気がある。

 代々の光の巫女が、ここで僧兵たちを鼓舞して、終わりのない天魔との戦いに向かう彼らを励まし続けてきたわけです。長く暗い時代において、宗教ってのはやっぱり人々にとっては救いであったんでしょう。
 だからこそ、これだけの施設が作られ、維持されてきたのであろうと。

 この時代において、神が戦いの道具として扱われてきた側面は確かにあると思います。ですが、神の救いを信じて、力なき人々を救うために戦って散っていった人々がいることもまた事実です。その中から、あの英雄も生まれ、奇跡も起こったのです。

 大聖堂の入り口には、聖騎士たちがリラに誓いを立てるときの誓詞が石版に刻まれて飾られてます。

 我は我が剣と魔力に懸け、我が導き手たる光神リラの御前に厳かに誓わん。
 我が生涯を神に捧げ、我が任務(つとめ)を忠実に全うせんことを。
 我はすべて民に害なすもの、世に毒となるものを絶ち、悪しき魔力を用いることなく、また知りつつこれを正さざるべし。
 我は心より民を助け、我が手に託されたる人々の幸(さいわい)のため、楯となり剣となりてこの身を捧げん。
 我が身は神に捧げられたるものなれば、我は我が力の限り神と民のために戦い、驕らず、裏切らず、強き心を持ち、戦友と神に誠実であり続け、死地においてなお迷わざることをここに誓う。

 これもまあ、ナイチンゲール誓詞のパクリというかオマージュなんですが、捧げられた気持ちは本物だったはずです。

 なんか思わずシリアスな気持ちになってしまいましたが、そういうものを感じさせる重みというか、そういうのを感じられたってことで、ここに来られて良かったと思います。

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