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終火②話「出会い・2年前の夏」

8月20日の土曜日今日は晴れわたる青々とした空で花火日和だ。 
私は涼太と公園内にある海賊船の前で3時に待ち合わせをした。
 

 花火が綺麗に見える穴場を涼太から教えてもらっていたので、それまでの時間は涼太の馴染みの公園近くの喫茶店でかき氷を食べることにした。

「おばちゃん、僕の彼女連れてきたよ」

 店主の女性に私を紹介してくれた。


「あら~可愛いコ連れてきちゃって」
「今井加奈子と言います」

 お店を入って奥の窓側の席に座った私は店内を見渡す。家族連れやカップルがちらほらいた。かき氷やパフェを頼んでる人が多く見受けられた。メニュー表を開くと、かき氷の写真と文字が目に入る。かき氷を指さして私は「これが食べたい」と言うと涼太も「じゃ僕はこっちにしようかな」それぞれ味の異なるかき氷を頼むことにした。
 
 私は苺ミルクにアイスの乗ったかき氷を選び

 涼太は抹茶小豆にアイスの乗ったかき氷を選んでいた。


  店主の女性が私たちのテーブルに来ると、涼太は親しげに会話をし始めた。

「おばちゃん、葉月は居るの?」
「葉月なら、いま浴衣着せてもらってるよ」
 
 奥から1人の女の子が出てきて、涼太を見つけると満面の笑みでこっちに来るではないか。
 なんて子供は天使のように可愛いんだろう!?
 屈託のない笑顔。

「あ――!!! 涼太お兄ちゃんだ」



「葉月!」

 3歳くらいだろうか? その女の子が涼太を目掛けて走ってくると、両手を大きく広げる涼太の胸に飛び込む。
 すると奥から背の高い、まるでモデルのような綺麗な女性が浴衣を着て出てきた。
 ショートボブで栗色の髪で大人の女性の雰囲気が全体から漂っていた。


 ここの喫茶店は涼太が子供の頃から食べに来ている馴染みのお店で夫婦で経営しているようだ。

「彼女連れてくるような歳になったか。涼太も。この前までまだ鼻水垂らしていた子供だって思ってたのに」
「ちょ、ちょっと、香織さん彼女の前でそんな話するか! 普通」
「ごめん、ごめん。涼太にはもったいないくらいの可愛らしい彼女じゃない」
「もったいないは余計だろ!」
「だって、もったいないくらい可愛いんだもん。ねぇ~。あっ名前は?」
「今井加奈子です」
「加奈子さんか。不束(ふつつか)なコですけど涼太のこと宜しく頼むわね。弟みたいなもんだから涼太は」
「はい」
「じゃ、ごゆっくり~」

 かき氷を食べ終えた私と涼太は階段を上ると


公園内の屋根付きのベンチに座り暫くウォークマンで二人が大好きな音楽をイヤホーンをお互いに片方ずつ耳に付けて聴く。

 二人が大好きなELLEGARDENの「スターフィッシュ」

 そして夜の7時半の花火開始時間に間に合うように、穴場の場所へ移動して花火が打ち上がるのを今か今かと心待ちにしていた。
 辺りが暗くなり始めると更に気分が高まるのを感じていた。
 

 7時半になると花火が打ち上げられた。カラフルで大きな花火が大きな音を立てて空に舞い上がる。
 いろんな音色を奏でる。
 

 気付くと私と涼太は綺麗な花火に酔いしれながら磁石のように吸い寄せられるかのように手を握りしめていた。
 手の温もりの感触よりも手汗のしめった感触を感じながら、私は思わず涼太の頬にキスをした。

 すると……

 涼太が私の唇にキスをし返してくる。
 あの時の涼太とのキスと花火の想い出が、今でも色濃く私の心の中に残っている。
 その時は、二年後の夏に涼太との終わりが来るなんて考えもせず幸せな夏の夜の花火だった。

 それから一年後の夏の想い出の話は、またお話をしようと思います。


次回へ続く~
 




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