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【UWC体験記㉑】F21(月経貧困支援チャリティ)の幹部にー初めて負った「本当の責任」

最初のPeaCoのセッションで紹介されたF21(Foundation 21)という団体。途上国、特にバングラデシュでの月経貧困(period poverty)を解決するためにファンドレイジングを行ってお金を送ったり、校内でも月経貧困についての教育を行ったり生理をタブー視しないような空気を作るために活動をしている団体です。

Council(委員会)の1つでは無いけれど毎週のミーティングがあり頻繁に活動はしているとのこと。私にとっては月経貧困は完全に新しいトピックで自分自身少し生理の話題はタブーと見がちだった意識もあったので興味が湧き最初のセッションに行ってみることにしました。

すると2年生のメンバーはみんな優しく、1年生が多く来てくれたことに大喜びで全員がF21のグループチャットに即加入させられました。1年間の活動内容などを説明してもらい、ぜひ私もこの一員になりたい!とそこから毎週のセッションに欠かさず行くことになります。


最初のファンドレイザー(PERIODブレスレット)

私たちの最初のファンドレイザーの機会は11月、WellCo(健康委員会)と合同で行うSpa Dayでのブレスレットの販売となりました。それまでのセッションではアイデア出しなどが多く、私はまだ英語力不足により委縮してほとんど貢献していないことに焦りを感じていたので、作成には積極的に携わろうとしました。

みんなで話し合ってブレスレットのデザインを決め、材料はリーダーと会計の2人でオーダーをしてくれていたはず。だったのですが、なかなか材料が来なく、肝心のブレスレット作りが始められない。さすがにSpa Dayでは諦めるか、と言っていたところ、前日の夕方にリーダーから連絡が。

「今材料が届いたから、すぐに集合してブレスレット作り始めるよ!」と言われ、慌てて図書館に集合しますが、人数は3,4人しかいない上に届いたブレスレットの紐が弾性が無いただのプラスチックの糸。

図書館で作業開始

当然そこにビーズを通してもブレスレットとしては機能しません。リーダーがなんとか学校内で聞き回ってどうにか弾性のある紐を持っている人を探し出し、なんとか1つ完成させた時には夜11時。土曜日の寮の門限の時間となり、解散せざるを得ません。

やっと1つ完成

そして次の日の朝集合することになりますが、約束の時間に行くと私1人。少し待つともう1人が来てくれ、さらに1時間後にやっと2人が来てくれます。そしてひたすらブレスレット作りを黙々と行います。

最後の追い込み作業

イベント開始は午後1時なのに50個は作ろうとしていたので最初は絶対間に合わないと思いハラハラでしたが何とかギリギリ間に合わせ、イベントを開始しました。Spa Day自体は私たちのブレスレット以外は全て無料でマッサージやネイルなどを受けられるというリラックスの場としての開催でした。

生理のスティグマ(偏見)を撤廃するためにあえてPERIOD(生理)という言葉をそのままビーズで入れたブレスレット。これが売れるかな?と正直結構心配だったのですが、スタンドに立って来る人にアピールしているとちょくちょく買ってくれる人が出てきます。

販売の様子

結局完売とはいかないもの、ほとんどが売り切れ、その売れ残りもその後みなが友達などに売り込んで完売することができました。そしてその後も「生理の時に付けてる!」と数カ月先でもブレスレットを付けてくれている人を校内で見かけることが度々ありました。

その時はUWCに来てから初めての本気で焦った経験だったのですが、この2日間を経て材料を頼むときの事前確認の大切さ、そして万が一何か1つトラブルが起きても諦めずに解決策を探し続け、助けてくれる人たちさえ探せば何とかなるんだ、という変な自信が付きました。


会計担当にーお金の管理への挑戦

この数週間後に次期幹部(リーダー2名、会計、初期)の選挙があり、私は立候補して会計になることができました。

リーダーではなく会計に立候補したのは、自分の発言力の無さでリーダーには怖気づいたこともなくはないのですが、それよりも会計担当、そしてお金を管理することには少し特別な思いがありました。

日本での募金活動の苦い経験

日本の高校で生徒会をやっていた時、かなり内向きで社会課題に目を付けるような部活(模擬国連・ボランティア等)が一切なく、興味がある生徒もほぼいないように感じられた私の学校を変えたいと、生徒会初の募金活動の提案をしました。

すると学校側は生徒がお金を扱うことに関してあまり良い顔をしてくれなく、コロナも挟み1年半の交渉の末、頻度も提案当初よりはかなり下げ、必ず教員の監督下のもと、お金も事務室に管理をお願いするという条件で許可をしてもらいました。

そして生徒が関心を持てるように興味のある募金先のアンケートを取り、やっと実施した日本赤十字社への募金活動。3日間の募金活動で1日目よりも2日目、そして3日目と興味を持ち募金してくれる生徒も増えていきました。

ただ、活動3日目、いつものように放課後その日の募金額を数えたあと、最終日ということで1日目、2日目ももう一回数え直します。すると、2日目の金額が前日数えたときより1円足りない。

厳しかった生徒会顧問の先生は激怒し、1円をなんとしてでも探し出すよう言われます。狭い面談室の中で見つかるわけもなく、普通に考えて前日の数え間違いである可能性が高い。それを恐る恐る説明したのですが、

「1円だからって無駄にしていい訳がない」
「生徒から預かるお金は親が働いて得ているお金だから失くすことは許されない」
「数え間違いだったとしてもそれはあまりにも責任感が無さ過ぎる

と説教を受け、悔しいながらも言っていることが全てまっとうで何も言えませんでした。活動自体は生徒会の20人弱のメンバー全員で協力してくれたのですが、私が始めからずっと1人で学校との交渉を続け、1人で事前の準備をしてきたので、この時のショックはかなり大きいものでした。

そしてその後ほかの先生方などに募金活動についてのお褒めの言葉を頂いてもあまり自分のこととは感じられない。これは逆に、常に教員の監督下で募金活動を実施し、私は実際本当の責任は何も負っていないという意識があったから。

全体的にとても後味悪く終わり、そのままUWCに来てしまっていたため、本当に生徒に全てが任せられるこの学校で日本では上手くいかなかったことに挑戦したかったのです。


会計としての初ファンドレイザー

そして私たち新幹部としての初のファンドレイザーは中東National GroupのNational Eveningの前に実施することに。中東の食べ物としてピタというパンにザターというものを塗ったもの、緑色のレモネード、そして利益率の高いポップコーンをやることになります。

初回のファンドレイザーということで前任の会計に手伝ってもらいながらも材料のオーダーを行い、当日の販売ではお金の管理を行います。National Eveningの前にやったこともあり、前回と比べても多くの人が買ってくれます。

ファンドレイザーの様子

そしてファンドレイザーの終わりには売上額の現金を私が自分の部屋に持ち帰り、管理します。少しでも多くの利益を上げることが優先なので、その場で現金を持っていない人がいる場合でも後払いも許可し、後日それぞれの人を追いかけて払ってもらう、それも私の責任です。

日本の単純な募金活動では無縁だった支出を管理するスプレッドシートに記入し、売り上げではなく本当の利益を計算している時、やっと本当に私に責任がある、と感じ喜びがこみ上げます。

私たちはやりたいことを大人の管理下でやっている子供ではなく、自分たちが解決したい目に見える社会問題のために自分たちで目標・計画を立て最もその成功に近い形を考える。

その過程でもしミスをしたり、なにかトラブルが起きたら本当にそれは私の責任になります。日本で抱いていた先生に怒られる恐怖での緊張感ではなく、せっかくの寄付金を漏らさず絶対に届けたいという緊張感でいっぱいになりました。

もう1つの大きな発見は、日本でやったただの募金活動でのただの「善意」としての寄付ではなく、今回のように何か対価として物品を受け取れると、寄付する側もされる側もより気持ちよく行える、ということです。日本で悩んだ、「寄付をするのは偽善者」というイメージ払拭にはこの考え方が一番だと今更ながら実感しました。

日本ではチャリティの街頭募金などを多く見かける一方、イギリスなどの海外ではチャリティショップというチャリティ団体が開く古着・古本屋を非常に多く見かけます。ぜひ日本でも広まって欲しい考え方だと感じました。


Period House Talk(月経についてのディスカッション)

その直後に行ったのが、寮ごとにF21のメンバーが月経関連の衛生やスティグマについて話をし、寮内でディスカッションするセッション。

これは男女関係なく全員強制参加にし、基本的な月経についての知識だけでなくどうやって生理中の人を労われるのか、そしてどうやってスティグマを撤廃できるかについて皆で話し合います。

私の寮ではこのtalkはかなり活発な議論になり、大きな成功を収めることができました。そしてこの後は心なしか学校全体としてもより男女関係なくオープンに生理について話すことができるように感じました。


オンラインキャンペーン(PAD)

同級生のメンバーの1人が中心となって計画、実行してくれたのがオンラインキャンペーン、その名もPeriod Across Difference(PAD)。この目的は、オンラインでのファンドレイザーを行うことが学校外にも月経貧困について周知を広めることができる上、より多くの人から寄付を集めることができるというもの。

まずはバングラデシュ人の生徒たちへのインタビューとバングラデシュからの映像でビデオを作成。このビデオとともにオンラインのクラウドファンディングのページを作成し、これを可能な限り広めます。

この時に頼ったのはやはりUWCのネットワーク。卒業生たち、そして各国のNational Committeeなどに協力してもらったことで合計£500(8万円)以上の寄付を集めることが出来ました。


FemiCon(フェミニズム会議)ーVulva Cupcake

年度末のFemiConはF21とテーマが似ていて絶好のチャンス!私たちはワッフル、そしてVagina(外陰部) Cupcakeを売ることにしました。

寮のキッチンにはオーブンが無いため、校内に住んでいるとても協力的な先生の家にお邪魔して作らせてもらいます。カップケーキの名前は強烈ですがアイシングをのせ外陰部の形を作るのはとても楽しい作業。そしてそういった常識破りなことがとてもウケるACではもちろん売ると大好評でした。

Vagina Cupcake

これを持って1年目のファンドレイザーは終了となります。1年間私が大切に保管したお金をバングラデシュ出身の同級生に預け、バングラデシュまで届けてもらいました。


全寮に無料の生理用品配布

ウェールズでは法律で全ての公立学校には無料の生理用品が配布されます。AC(私の学校)は公立学校ではないので、今まではその対象外でした。

しかし1つ上の代からウェールズ政府に働きかけ始め、私たちの生徒の経済状況の多様性を鑑みて支給をお願いしていたところ、1年目の年度末に承認していただけました。

そして私たちが2年生になってすぐ、定期的に大量の生理用品を学校に届けてもらえるようになります。ただ、これを箱ごとに適当に寮に置いていくとその箱ごと取って行ってしまう人が出るのは目に見えています。

よって、その時期にちょうど入ってきていた一年生メンバーたちに中心になってもらい、ナプキン用の簡易ディスペンサー(配布用箱)を制作します。

1年生たちが作ってくれたディスペンサー
カラフルな塗装も

そしてそのディスペンサーを全ての寮のトイレに配置し、定期的に補充を行うシステムも作ります。このことで生徒全員が経済状況に関わらず生理用品を自分では購入する必要がなくなり、学校内での月経貧困は完全に防げることになりました。

全てのトイレに設置

その後私たちの1つ下の幹部の交渉によりディスペンサーへの補充作業を学校の清掃員さんたちへ正式に依頼することができ、学校公認の設備として取り入れられることになりました。

1年生への役割交代

そして2年目にも3回ほど、私が会計係としてファンドレイザーを行い、Period House Talkも行ったところで幹部の代替わりがやってきました。

新しく幹部になった1年生たちはみな最初からものすごく積極的に活動してくれていた人たちで、代替わりの前でも、私たちが2年生になり学業で忙しくなってからはむしろ頼りっぱなしでした。

というのも、ACでの風潮として「1年生は課外活動へのやる気も時間もあるけど、2年生は学業を優先するべき」というのが当たり前とされているところが少なからずあります。よって、入学したばかりでF21の活動に目を輝かせていた1年生に私たちもかなりの実働作業を任せていたところがありました。

これは去年、私たちの1つ上も私たちが入学したばかりは完全に同じことをしていました。その時は「なんで2年生で幹部なのに私たちより仕事しないの??」と疑問ばかりでしたが自分が2年生になるとその気持ちがものすごくよく分かります。

ただ私としては自分がいやだなと思ったことは他の人には繰り返したくないし、幹部としてF21の活動に時間を割かれるのは当然のこと。なので物理的に可能な範囲で1年生がメインでやってくれている作業にも参加していました。

そして幹部が入れ替わった後、私の同級生の元幹部のメンバー、そして他の同級生メンバーはほぼ全員ミーティングにも来なくなりました。これも去年も起こったことで、部活で言うような「引退」ということなのかもしれないのですがこれも私には疑問しかない。

もともと月経貧困に対して何かしたいという熱意があって加入して、幹部になったんじゃないの?だったら今はその意欲が無くなってしまったということなの

確かにやらないとしゃれにならない学業に追いつめられ、もう幹部でも無くなるとなると優先順位が低くなるのは分からなくはないのですが、だからと言って消えるのでは、なんだかF21に対して失礼に感じられるし、人間として整合性がない。それに私は1年間活動したことで何倍もこの問題の大切さに気付くことができ、自分が何か貢献したいという気持ちが強くなっていました。

これも若干私の意地ですが、かなり忙しくても物理的に可能な限り毎回のミーティングには卒業まで行き続け、せっかく去年の経験を持つメンバーとしての意見を入れたり、とにかく1個下の代の活動に対して何かできることがあればなるべく積極的に動いていました。

この私を見て、1年生の幹部の子たちからはいつも「忙しいのに来てくれてありがとう」と言ってもらったり、逆に「なんで今も来てくれるの?」と質問されたり。

大学進学で優位に立てるような肩書のためだったり、私が少しあったように何か責任を負う経験をしてみたい、という理由でこのような活動をやってみる人は多いのかもしれません。それでも社会問題解決のために、ましては他人にもそれを広め、支援をお願いするようなことをやったあとにはそれを2年生になったからと言っていとも簡単に捨ててしまうようなことはできればUWCの生徒にはしてほしくない。

押しつけがましいかもしれませんが、2年生になって多くの同級生を見ていて私が感じたことが少しでも行動を通して1年生たちに伝わってほしいなと思って可能な限りの努力をしていました。

もちろん普段は学校ではこのように先輩だから後輩に模範を見せなければいけない、という雰囲気ではなく、私も本当に優秀で経験もある1年生たちにはいつも色んなことを教えてもらっていました。

特にF21では一つ下の代のリーダーたちの実行力が素晴らしく、私たちが1年間にやったことに加えて多くの新しいアイデアを他のメンバーとともに実現していく姿を見て尊敬の気持ちばかりであるとともに、とても感謝しています。



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