札幌滞在記録 (2022/12/13~12/18)
【12月13日(水)】札幌市こどもの劇場やまびこ座(やまびこ座)へシアターZOOの清水さんの稽古に同行。
2月公演予定の児童演劇を制作する大人向けの講座を見学した。講座に参加している方には、小学生から続けてやまびこ座の演劇講座に参加している大学生や社会人がいらっしゃった。
講座は小学生の部、中学生の部、大人の部と年齢でクラスが分かれており、長く作品作りに関われるようにシステム化されている。小学生から創作の場にいて表現をすることに慣れているからか、稽古中にアイデアがどんどん生まれてきて、作品が自然と立ち上がっていくという感じだった。
やまびこ座は、子供のための人形劇や児童劇を上演する市立の劇場で、公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会(SYAA)が委託運営している。図書館スペースや遊具、工作室や多目的室が併設。工作室や多目的室があることにより、作品の制作から稽古公演までを全て1施設で担うことができる。
ここは特に劇を見るという目的はなくても、地元の子供たちが学校帰りに遊びに来るような地域に親しまれる施設だそうだ。ほぼ毎週末公演が行われており、そこを訪れる子供たちや親子連れが主に週末に見たいと思った時にいつでも舞台を見ることができる。より興味を持った方は児童演劇や人形劇を作る講座に参加することもできる。
私が見学した大人向けの部に参加する方に、なぜ長く続けられているのかと聞くと、「学校外の友達に会える場所として遊びに来るような感覚で劇場にきている」とのことで、子供たちの居場所としての役割にもなっていると感じた。また、舞台上の緞帳も管理する人が見ていれば子供も触れことができると聞き驚いた。演劇講座では合宿をしたり、肝試しをしたり。文字通りなんでもできる劇場だと知った。
【12月14日(木)】
地下鉄南北線中島公園駅下車徒歩5分、中島公園内に建つ札幌市こども人形劇場こぐま座を見学。滞在先のシアターZOOにも近い。
やまびこ座と同じく、公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会が委託運営している。「こども向けの人形劇を専門にした劇場」と「児童会館(他県の児童館と同じもの)」が一つになった施設でした。ここは図書スペース、工作室、多目的スペースの他に体育館がある。施設に入ると10人くらいの小学生が廊下に座り込んで、おしゃべりしていた。
斎藤歩さん(札幌座)の脚本で12月のクリスマスにやまびこ座にて人形劇をやるということで、急ピッチで準備されているところにお邪魔した。(さっぽろパペットシアター「北のおばけ箱 2」)人形作りはこぐま座で公演はやまびこ座でということらしい。その場で元やまびこ座こぐま座館長の矢吹英孝(SYAA)さんに、さまざまなお話しを伺った。
こぐま座と併設する児童会館は、戦後すぐ日本で初めて作られた児童会館。札幌は子供たちのために何かやろうという気持ちが根付いているという。戦後の物品が不足している時期にも、ある程度紙の流通が確保されていて子供新聞が続けられていたことも一因と聞く。劇場の方は児童会館が建てられた後、当時の市長が演劇に親しみのあったこともあり開館。設立から今年で47周年。
ここで公演するアマチュア劇団は全て支援団体としてみなされて、一緒に公演を作り劇場自体も一緒に作っている。一緒に人形作りをしていたのも小学生の時から劇場の講座に参加していた地元の高校生や教職を志す大学生、社会人、館の職員。中には自分の劇団を立ち上げて活動している方もいらっしゃった。
低価格で作業場所や練習室が利用でき公演が打てる設備が整っていて、続けていきたいという人の受け皿になる場所は貴重だと思った。
こぐま座でもやまびこ座と同じく、色々と講座が開かれている。初めはお母さんが子供たちに見せる指人形作りとして講座が開かれた。そのときは講座を受けたりすることが流行っていたこともあり、募集を出すと30人以上の応募が常にあったという。ただ今は多い時で10人ぐらい。これは京都で講座をやった時に集まる人数感とあまり変わらないのかなと思いました。講座を開くだけでなく、受けてくれた人や興味がありそうな人に、どのように劇場を作っていく仲間、業界を作っていく仲間に引き入れていくのかが大切とおっしゃっていた。
またこぐま座には、長くボランティアとして活動されている方がいらっしゃる。ボランティアの方が劇場のグッズを作成されたり、劇な関わる制作物の手伝いをされていたり。人形作りは趣味一緒になりやすい。趣味としてのボランテアの活動が劇場を支えていると知った。
やまびこ座もこぐま座も、子供のための劇場である。公立の施設なので建物にお金はかからないが、子供のための事業は収益が見込めないこともあり、常にどのように助成金を取ってきているのか考えているという。文化庁の助成金が大きく占めているそうだ。(準備されていた公演はJAPAN LIVE YELL project の補助事業になっていた。)
【12月15日(木)】2019年、札幌の中心部・東西線大通駅から徒歩2分の場所にできた劇場、札幌文化芸術劇場hitaruに行く。
劇場がある「札幌市民交流プラザ」には、劇場の他にクリエイティブスタジオ・練習室、多目的スペースの『札幌文化芸術交流センター SCARTS』、図書館、文化芸術活動に関する相談窓口、レストラン・カフェの入った複合施設となっている。また、ビルの中には複数のオフィスや放送局なども入居している。札幌市の文化芸術活動の情報発信と交流の拠点であり、多様な機能が集積する施設である。実際に利用している人に聞くと、交流をテーマとした施設としてはハリボテのように感じると言われていた。こんなにたくさんの機能が一箇所にあるのに、何が原因だろう??自分の中では具体的な答えが出なかった。
公演などの催しを行えるところは主に3つで、『hitaru』・『クリエイティブスタジオ』・『札幌文化芸術交流センター SCARTS(スカーツ)』のSCARTSコートがある。図書館・情報館でもセミナーなどが開催されている。
●札幌文化芸術劇場hitaru
建物の一番上の4F-9Fにある。主催事業では、オペラやバレエ、コンサート等が主に開催されている。チケットが完売だったため、残念だが観劇は叶わなかった。
客席:全座席数2,302席(1~4階席)
利用料金:平日か土日か時間帯だけでなく、どの階を使うか座席パターンや入場料、営利目的かどうかで利用料金が変わる。
●クリエイティブスタジオ
客席:移動観覧席:175席 ※椅子の追加が可能(最大228席になる)
公演や稽古場、リハーサルなどで使用される。
●SCARTSコート
多目的に使えるホワイトキューブの空間。最大収容人数:150名
『札幌文化芸術交流センター SCARTS(スカーツ)』はアートコミュニケーターを置き、作品鑑賞の連続講座や作家の講演や親子向けのワークショップ等、札幌の芸術活動と市民をつなぐ活動をされている。SCARTS(スカーツ)モールでは、マルシェも開催されている。ただちょうど催しをやっていない時期でした。
●図書館・情報館
図書館は、本の冊数が多いというよりは、テーマごとに分類しセレクトされた書籍が並んでいるという印象を受けた。舞台作品のコーナーも比較的わかりよい位置で見つけられた。
図書館内(予約制)と2階の通路スペースには作業机が並んでいて、主に学生や20代〜40代の方が、読書や自習,仕事などで、ほぼ全ての机が埋まっていた。高校生に人気の勉強スペース。
後でネットにて知ったことだが図書・情報館にも相談窓口があり、北海道よろず支援拠点や日本政策金融公庫の窓口が出張できているそうだ。新しい事業を始めるための準備や融資先選定などの相談ができる。
ただインフォメーションカウンター(相談できる窓口)は、通路に面して設置されていて人の行き交いも多いため、その場で落ち着いて相談するというよりは、オンライン上での相談がベースなのかなと思った。
●カフェ
焙煎された美味しいコーヒーやケーキが提供されている。お店の中には、図書館の本が並んでいて、図書館にもカフェのコーヒーを持ち込めるシステムになっていた。
●その他
ホームページはそれぞれの施設の情報がすっきりとまとめられていて、とても見やすく使いやすい、この施設でいいなと思ったことの一つ。施設の貸し出しや図書の本の予約、相談の予約までweb上で行える。主催事業と共催事業のアーカイブのページもあり、事業の詳細や記録写真、入場者数まで公に公開している。
https://www.sapporo-community-plaza.jp/archive.php?p=2&kind=1
【12月15日(木)夜】
シアターZOOにてシャンカル・ヴェンカテーシュワランさん演出の犯罪部族法を観劇。
1871年~1952年に英国植民地下のインドで実際に施行された「犯罪部族法」を題材に、舞台上で2名の異なる言語を持つ俳優が、社会に染み付く差別構造について対話する作品。対話は、労働の動きの繰り返しの中で進行していく。
上演の初め、俳優は観客一人一人に目を合わせるようにこちらを笑顔で見るのが印象的だった。後から聞くと作品に観客を引き入れる仕組みと言われていた。私としては、観客が存在することを認められているような、あるいは観客と演者とを一度線引くような緊張感も感じた。
作品の中で掃除をするシーンがいくつかある。掃除をすることで見えていなかったものが見えてくる。それ以上に、拾い上げて見せてもらわないと存在にさえ気がつかない。
差別されてきた人は、自分が社会の中でこう振る舞うべきというものを持っていて、それへの抵抗や葛藤がある(無自覚な場合もあるだろうが)。しかし、差別の上に立つものはそこに差別があることにさえ気がついていない。自分がどうかと常に考える時間を過ごした。
アフタートークでは、観客からたくさんの質問あがった。インドでこの作品を上演した時のことを話してくれた。とても共感してくれるところもあるが、場所によっては絶対に作品を上演できない場所があるし、実際上演した会場で乱闘の騒ぎになったこともあるそうだ。自国の社会構造を扱うことで、彼ら自身が批判の対象になってしまっている。体制が変わること望んでいない人。犠牲が起こるかもしれないから、穏便に済ませたい人。作品としての態度は、カースト制度を批判をするのではなく、あくまで問題提起をしていた。
観劇後、昨年度E9でも上演いただいた山田せつ子さんが観劇にいらっしゃっていてお話しをした。山田せつ子さんは、シアターZOOにて2022年までの三年間クリエイションした記録の冊子を見せていただいた。三年間の制作中のインタビューをまとめたものだ。
最近、公演の評価をするのは難しいなと実感している。来場者数を控えていてもそれが評価というわけでもないし、お客さんへのアンケートはあるが、主に作品に対する感想なので。だから、この冊子は一つの振り返りの形としていいなと思った。情報誌も広報誌も手間がかかるが、作品に誰がどのように関わっているのかその過程を記録に留めたいと思った。
帰りにリハーサル室と札幌座の楽屋を見せていただく。
10人が在籍しているが、実際の稼働は5名。公演の際には客演の人もこの楽屋を利用する。ZOOの隣のリハーサル室はほぼ劇場と同じ広さをとって、リハーサルや稽古をすることができる。
【12月16日(金)】
北海道演劇財団の事務所にて、北海道演劇財団の設立背景を斉藤歩さんからお伺いした。
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小劇場ブームの時に、札幌は演劇鑑賞会[NPO法人演劇鑑賞会北座] の活動が他県に増して盛んになり、会員数が最大で6000人規模にまでなっていた。その運営が任意の団体では賄えなくなった事と、札幌にも質の高い作品を呼びたいと声が高まったことの2つが大きな要因で北海道札幌財団が作られた。
札幌の演劇状況の改善は、初めハード面から考えられてきた。
1000人の劇場で演劇を見るのは大変で、多くても500人600人でないとお客さんと作品の距離が出来すぎて演劇は見にくい。だが当時の札幌の公立劇場は偏ったジャンルに連続で貸す日数が決められていたため、1週間以上演劇で劇場を押さえられなかった。コンサートでは一度にたくさんの観客を入れられるが、演劇はたくさんの人数を呼ぼうとするとその分ステージ数を増やさなければいけない。200〜300人くらいのちょうど良いキャパの劇場を欲していた。
それを受けて、当時の堀知事という方が道立劇場構想を発表した。ただ劇場を作った時の運用する母体が必要で、「公益財団法人北海道文化財団」が作られた。
*公益財団法人とは、法律に基づいて設立された公益事業を行う法人。活動を支えるためには寄付による支援が必要で、寄付をした個人、法人に対して所得税や法人税の控除などの税制措置が設けらている。令和3年4月の内閣府の発表によると、公益法人全体の活動の中で寄付収入は約3,769億円、会費収入が約1,091億円。
また、当時の市長の公約に、札幌市に劇場がいくつかあるような構想(シアターパーク構想)を入れさせた。署名を集めなど、運動を主力となっていたのが当時の演劇鑑賞会。公約に入れられるほど、市民の声が大きかった。
しかし、その構想によって実際にできたのは、札幌コンサートホールkitaraという音楽ホールだけだった。活動した演劇人たちはこんなに頑張ったのに音楽に取られてしまったと落胆。その後、道立劇場構想も北海道の財政が破綻したことで、計画が中に浮いてしまった。
次にソフト面も考えられるようになった。
鑑賞会という演劇を呼んでくる組織はあるが、作品作る母体がなかった。当時の札幌は今以上に、力がある人材がどんどん東京に出て行っていた。アマチュア劇団は100団体ぐらいあったが、20代はいるが30代以降は食べていけないなど様々な理由でほとんどいなかった。ソフトを担える人材を東京から呼んでくるのではなく、北海道内で育てたいと、北海道出身の演出家に向けた北海道演出塾が始まった。
最終的に、北海道演劇財団設立の大きなきっかけになったのは、
ロシアからレニングラード・マールイ・ドラマ劇場の札幌公演。鑑賞した人たちは、地方都市でも質の良い作品を作ることができるとおどろき。こんな作品を北海道でも作れる団体を設立がきまった。
最初に集めなければならないほとんどのお金を北海道新聞が出資。北海道新聞が出せば北洋銀行やテレビ局その他様々な企業がお金を出してくれて、ぎりぎり設立をすることができた。行政の予算や税金で作った財団が多いが、北海道演劇財団は民間が主な財源で作った珍しい財団。1996年の記者会見で札幌のアマチュアで演劇をやっている若者をプロに育てていく財団として声を上げた。
初めに、北海道演劇財の常任演出家兼理事としていたのがMODE主催の松本修さん。ただ、松本さんが札幌で活動されていたのは1年のうち2ヶ月程度。そのため2ヶ月間に札幌の劇団や俳優を集めて稽古や公演を行いレベルが高まったとしても、1年後戻ってくるとまた同じ状況に戻ってしまっているということが続いていたそうだ。その後財団は、理事の持ち物の倉庫を譲り受けて、劇場を持つようになった。
演劇のファンたちが財団を運営していたので、作品を作る理屈がわからないこともあり、劇場をうまく活用できていなかったという。
今財団の理事長をされている斎藤さんは、契約アーテストという立場で北海道演劇財団に関わり始めたそうだ。大学の演劇サークルで立ち上げた劇団を琴似で活動し、その後プロとして東京で活動されていた。そこから、財団に声をかけられて札幌に戻ってこられる。財団の芸術監督と常任理事に就任。それまでの財団理事長は北海道新聞の人で、財団を立ち上げた時に出資した人が自動的に理事になっていたので、財団としても大きな改革だった。
2016年から財団の仕事を整理して今に至る。現在の財務状況としては、協賛金、特別支援団体全部集めて300万円行かないくらい。札幌市からの補助金が300万。あとは芸術文化振興基金得て、全部で7000万くらいで動いている。初めは北海道の補助もあったが、北海道の財政難によりいまはないそうだ。劇場の2名の職員で回しているが、今後3人に増やすと健全な運営ができる。コロナの影響でもう少し辛抱しなければならないと言われていた。
その後年月は経ったが、2024年春に客席数226席の新しい劇場「北八劇場」が建てられようとしている。札幌の演劇事情は変わるだろう。。。。。。。。。。。
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札幌の演劇鑑賞会も今は人数が非常に減っていて、劇場間でお客さんの取り合いが起きてしまっている。だから普段演劇を見ていない人にも面白いと思ってもらえる、新たな観劇者層を開拓しなければならないという状況でした。
【12月16日(金)午後】
コンカリーニョ(生活支援型文化施設コンカリーニョ)とパトス(Patos)を見学。
運営団体NPO法人コンカリーニョは、コンカリーニョだけでなく、駅構内にある公演スペースのパトスと、稽古場施設あけぼのアート&コミュニティーセンターを業務委託することで経営している。運営者は理事と従業員2名とアルバイトスタッフ6名。また、基本的には常駐の技術スタッフはおらず、公演の技術管理も職員とアルバイトがになっている。
職員の藤谷真由美さんとKIMYOOIさんから、創立10年を機に発刊された冊子を見ながらお話しを伺った。
■コンカリーニョ
通常客席173席、最大230席。
通常利用料金:平日90,000円・土日120,000円
長期利用で割引がある形。
(5日間利用 -30,000円/6日間利用 -50,000円)
<設立背景>
北海道大学出身の人たちが集まって旗揚げされた「札幌ロマンチカシアター魴鮄(ほうぼう)舎」が、後にコンカリーニョとなる琴似の倉庫を稽古場施設として利用し始めた。稽古場施設の利用だけではもったいないと一般に貸し出すフリースペースとなる。劇団の活動停止後、「ConCarino」と名前を変えた。JR琴似駅横の喫茶店の背後に立つ、石造りの倉庫だった。
そこが2002年、周辺地区の再開発計画によって取り壊されることなる。取り壊しの際には周辺からいろいろな声が上がったという。存続を目指す声、残る一部の建物で活動を続けようという声、新たにこの場所に建てられる建物の中にスペースを確保しようという声、琴似界隈の他の場所に活動を移そうという声など。
結果様々な選択肢の中から、NPOコンカリーニョを発足させて同じ場所に立つ建物内に劇場を作ることになった。変わる段階で、この地区が劇場を立ててはいけない地区になったため、頭に生活支援型文化施設がついて、文化芸術に限らず地域に開いた劇場を作ろうと設立される。
<劇場の特異な主催事業について>
コンカリーニョは、劇場でできる自由度がとても高く、近くにある琴似商店街や地域住民と一緒にやっている企画が特に面白い。
●住民劇は、長年に渡り多くの地域の人が参加している。題材は北海道の歴史を扱った時代劇や民話など。一度参加した参加者がずっと続けて参加している。創立10周年の冊子には、出演者の一人が赤ちゃんの時に初めて出演した写真から、公演ごとに少しずつ大きくなっていく様子が載っていて、地域というキ―ワードがこの劇場にとって大きいのだろう。
●骨董市―劇場内に骨董品ならなんでも敷き詰めるように並び、骨董市が行われる。普段劇場に来ない人も、この日だけはくるというお客さんがいらっしゃる。
●夏祭りー客席をイントレで組んでいて取り外し可能なので、フルフラットにして搬出扉も大きく開け放って開催される。劇場内には出店(飲食もあり)と特設ステージを設けて、ステージにおいてはチアリーディングやフラダンスショー、ミュージカルなどが披露される。最寄りの駅からのアクセスもよく地元の人たちはもちろん道内外からの観光客で賑わうそうだ。
●格闘技イベント、プロレスのイベントも開催。
●寄付をくれた人の人生史や企業の社史を演劇にする公演。
ただこれらの住民に開いたイベントは、コロナで一度中断してしまっている。コンカリーニョでは、コロナの初めからしばらく、観劇の際にはフェイスシールドを全員にしてもらう対策までしていたそうだ。元々が自由度の高かい劇場だったので、他の施設以上に感染対策はできること全て対策する必要があったのかもしれないと思った。
■ターミナルプラザことにパトス
収容人数:49名。
通常利用料金:平日49,500円・土日77,000円
延長料:11,000円/1時間
地下鉄東西線琴似駅地下二階の倉庫を改修された施設。2002年より札幌市から委託運営している。ライブハウスのようなイベントスペースと練習スタジオ、ギャラリーが併設。コロナの影響で、練習スタジオとギャラリーは一時中止して、公演のある時にスタッフが管理に入る運営だそうだ。
今は、演劇の公演が多い。常設のライトが仕込んであり、吉本興業札幌事務所の定例ライブにも毎年利用されている。
パトス見学後、コンカリーニョに戻りRED KING CRAB『遭難』を観劇。
舞台美術に大掛かりな仕掛けがあり、見応えがあった。舞台美術は高村由紀子さん。
また札幌の公演は「エヌチケ」というチケット購入システムを利用されている公演が多い。エヌチケは、イベントの企画運営をする株式会社ダブルスが運営していて、安い手数料で宣伝まで行ってくれる。システム使用料、決済手数料、発券手数料をお客様から頂かずに、チケットを当日会場受け取りでチケット代だけで購入が可能。クレジットカード決済のみ。
今度、他のチケットシステムのことも調べてみたい。
【12月17日(土)】
ELEVEN NINESの農業少女仕込みを見学。演出の納谷真大さんから、新しく2024年にできる北八劇場の話を伺う。納谷さんは北八劇場の芸術監督をされる。
客席数は226席で、このキャパの劇場は札幌でちょうど求められていたサイズだなと思った。現在、年間プログラムを構想中の段階だそうで、ある程度のレベルの高い作品を提供する劇場にされたいと言われていた。海外のアーティストもたくさん来たりするのだろうか。
また技術スタッフについては、hitaruが色々なスタッフの会社を集めて一つのスタッフ集団を作り、そこにスタッフ発注できるようなスシテムを開発し実走されていて、それと同じ方法を採とられるとのことだ。常駐のスタッフは置かず、発注内容として同じ人ができる限り来てもらえるように考えられていた。
その後、シアターZOOの稽古室にて、北海道シアターカウンシルプロジェクト連携企画「文化芸術は誰のもの?おかわり」に参加。北海道シアターカウンシルプロジェクトとは、地域と舞台芸術をつなぐ新しい文化芸術支援のあり方について検討・検証をしていく場。
その日は、札幌の人たちの芸術に対する考え方として都会(主に東京)にばかり目が行きがちで、もっと地方に目を向けてた方が面白いものが作れるのではないかという話から、一度栗山市の地域協力体で活動されている土屋綺香さんの話を聞いてみようと話が膨らんでいた。
栗山町では、北海道演劇シーズンと協力して、2022年9月に「ライブアートツアーin栗山=札幌の俳優たちが、まちにゆかりの歴史上の人物などに扮して市民劇を行い、秘められたエピソードやまちの特産物、観光名所などを紹介する新しいツアー企画」(引用)を行なっていた。映像は地域の魅了が詰め込まれていて、新しい発見や驚きが多かった。
土屋さんは、地域の人が地域の魅力を伝えようとすると、受け手が受け入れられないような深い敷居の高い情報になってしまうので、作り手と受け手の間に伝え手が必要と言われていた。伝えてが、気楽に手に取りやすい、敷居の低い情報に変換する。そこに一つの手段としてアートがあっても良いのかもと言われていた。
前提としてやりたいと思ったアーティストがやるべきではあるが、誰かが取り上げないとなくなってしまう文化や生活はあるだろうなと思った。
栗山市に移住した土屋さんは、実際に地方に来て都会ではなかった価値観を得て、自分がやりたいことにつなげていてお話しが終始面白かった。「都会にいるときは人をますでしか見ていなくて、栗山では、文化が人と一緒にやってきた。リアルさ個人というものが付随してついてきた」という言葉が印象的だった。
後半の話では、劇場が演劇や興味のある人しか集まらない。
昔札幌にあった駅裏8番倉庫のような、誰でもフラット立ち寄れる場所が作りたいという話が出た。演劇を観にくる人だけでなく、目的もなく来れる場所。今後E9パークができたら、公園はきっとそういう場所だから、そうなったらいいなと思った。
この企画は、d-SAPという札幌演劇情報サイトにレポートがまとめてある。https://d-sap.com/15176/
【12月17日(土)夜】
演劇専用小劇場BLOCHに、北海学園大学演劇研究会の定期公演を観劇に行く。若いお客さんが多かった。
この劇場が開業したのは2001年。学生劇団などのアマチュアの団体が多く公演する他、吉本興業の札幌支社が徒歩5分の距離にあり、吉本のお笑いライブや劇場主催としてもお笑い企画が多く催されている。プロで演劇をやりたいという人よりは、アマチュアでも札幌で演劇を続けていきたいという人に、できる限り手頃な価格で公演ができる場をと考えているそうだ。
今度、主催事業として行う一人芝居のショーケース企画を教えてもらった。札幌で劇団(複数人で)として演劇を続けていくのは難しく、一人で演劇を続けている人を集めた企画を始めたという。
また、前身の札幌本多小劇場は(その後ルネッサンス・マリア・テアトロに変わる)本多劇場グループの代表の本多一夫が立てた劇場で
今も力のある演出家や俳優、脚本家を東京の本多劇場グループの劇場に送る独自のルートを持っている。
客席数:99席
使用料金:平日1日49,500円〜(税込・電気代別)
3日間(土・日・祝含む) 203,500円(税込)
4日間 253,000円(税込)
1日2ステージ以上上演する場合は、1ステージにつき6,000円の追加料金
延長料金:6,600円/1時間
観劇後、札幌の若手団体 ポケット企画 の「身体と演技」ワークショップの終わりがけにお邪魔する。場所は札幌市若者支援総合センター。
ワークショップは、次回公演の創作段階で公演テキストを使って、演出や演技について考えるという企画だった。実際には、通常の稽古場に一般の人が混じっているような状態だった。
お客さんの目線からすると、観劇だけではない一歩踏み込んだ作品の鑑賞体験としていいなと思った。ただそのときの主催の三瓶さんは、ワークショップとしての着地点を探しているような感じだった。アーティストのタイプにもよるだろうが、クリエイションの段階でさまざまな視点を持てる機会は大事だ。ただ参加者からお金を取っていることに対してどう考えたらいいのかなと思った。いや、一緒に創作する作品に関わることにお金を払うのは、別に変なことではないか!?と悶々と考えた。
【12月18日(日)】
国立アイヌ民族博物館ウポポイに行く。
その後、しらおい創造空間「蔵」でもう一度犯罪部族法を観劇する。
施設には、多目的ホール、カフェ(喫茶店)と調理場、ギャラリー、和室がある。建物が石造りの蔵になっていて、多目的ホールも蔵の中。NPO法人しらおい創造空間「蔵」が運営。
喫茶店『くらと』は最近オープンしたそうでレトロモダンな感じで、とても雰囲気の良い喫茶店。Wifiと電源があるのでPC作業をされているお客さんがいらっしゃった。多目的ホールでも喫茶の飲み物を持っていって、観劇できるシステム。
多目的ホール 利用料金:1,000円/1時間 音響・照明機材使用料は別途
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