見出し画像

ヨガを伝える仕事に導いてくれたもの

ヨガを伝える仕事に就かせていただくきっかけになった出来事について、今日はシェアができればと思っています。

大きな怪我を経験して

カナダに来たばかりの頃、歩行中に車に轢かれるという交通事故に遭いました。顔面を骨折して、肩や膝も損傷する大きな事故でした。8年ほど経った今でも後遺症はあるのですが、アシュタンガヨガが体と心の回復に大きな手助けをしてくれたのです。
アシュタンガヨガには、2時間体を激しく動かして、”難しい”ポーズをとるもの、というイメージがある方もいらっしゃると思うので、意外に思われるかもしれませんね。

もちろん最初は絶対安静、運動は一切できなかったので、いわゆるアーサナ(ポーズ)を使ったアシュタンガヨガの練習はできませんでした。
ヨガの師匠のFionaから、事故に遭って間もない頃に、「練習を続けるように」と言われた時は何事かと思ったのですが(笑)、彼女の意図が伝わったときに、”ヨガの練習”という概念がガラリと変わったのです。

気づきが先にあってポーズが起こっていく

彼女の言う練習は、もちろん、決められたアーサナをとっていくことではありませんでした。体の回復具合に合わせて、呼吸の吸う・吐く、負担のない座り方、バンダ(体のコア)を使った立ち方、痛みのない体の動かし方を教わっていったのです。(最初の方はスタジオに行けなかったので、電話やメール、動画でのサポートを受けていました)
今の体に圧倒的に気づいていくこと。今できるマインドフルな動きを繰り返していくこと。それが3分の練習(呼吸だけ)でも、2時間の練習でも、心と体が満たされる感覚って同じなのだなと思った記憶があります。これは”正しい”ポーズをとることやポーズ数を重ねること以上の気づきでした。

色んな治療を受けましたが、その前に何年も練習を続けていたこともあってか、ヨガが最も自分の体の回復に「使える!」感覚がありました。
「ポーズをとりにいく!」のではなく、今の体の様子に気づくことがまず先にあって、その上でポーズ(立つ・座るだけでも)が起こっている感覚を覚えることができたのです。

体は不自由だったけど、ヨガに対する考え方はもっと自由になった

もちろん痛みや制限のある練習にはフラストレーションが溜まったり、「”本来であれば”こうあるべきなのに」といった思考に陥って無理をしたこともありました。でもそういう練習の先には充実感や気持ちよさは無かったのです。

その当時、一つ一つの呼吸の仕方、立ち方、バンダ(コア)の使い方、痛みのない動かし方を徹底的に学んだことで、より強靭な体とマインドをヨガによってあらためて教えられ、育てられました。
この時期、体はすごく不自由だったけれど、ヨガに対する考え方がすごく自由になったし、さらにヨガが大好きになったのです。
今の体、今の私の状態を受け入れる・降参することがこんなにも気持ちの良いヨガにつながっていくんだということに気づいた時期だったなと感じています。おそらくこの時期に、「この素晴らしいものを伝えていく側になりたい!」という気持ちの種が撒かれたのかなと思っています。

ヨガの練習は”進歩している、退化している”ではなく、ただ毎日シフトしているだけ

このような経験をした上で、一周回ってやっぱり、アーサナの練習って楽しいなって私は思っています。地球に生まれて、動かせる体をいただいて、それを色んな形で表現できるのって最高です!
今ある体で今できることを少しずつ重ねていくこと、それが体にも心にも大きく作用していくし、1晩で色んなアーサナが取れるようになるわけでは無いけれど、毎日、気づきが先立つ練習を重ねていけば、Posture will come. ポーズはその瞬間の体と心に最もフィットする形で起こってくることでしょう。

事故のような大きな出来事だけでなく、日々日々私たちの体は変わるし、加齢や環境や天気によっても左右されます。
ヨガの練習は”進歩している・退化している”ではなく、ただ毎日シフトしているだけ。そしてそれに降参して、自由に楽しむことが大事だと心から思います。そんなことをシェアできるヨガのお仕事が本当に大好きで、幸せだな〜と思っています。

いつも受け取ってくださっている皆さんには言葉にならない感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。

それでは、またプログラムでお会いしましょう!

Saori Instagram Link : https://www.instagram.com/saorilemyuimoue/

※こちらの記事はVeda Tokyoを通して2024/2/22に配信されたエッセイ(タイトル: Free Breathing with Sound vol.11 ヨガを伝える仕事に導いてくれたもの)です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?