実録 ドラキュラ菜園に立つ 6

大地をひっかく午後三時

農作業というと、イメージするのはやや高齢の方が鍬やら振り下ろしたりしているのどかな光景なのだが、のどかなんてものではない。ここは戦場なのである。一体全体こんな重労働をお年寄りにやらせるなんて世の中どうなっているんだろうか。というぐらい、畑を耕すのは大変である。今回わたしが借りた畑は、すでに一度業者が入って雑草などを取り多少整地してもらっていたらしいのだが、それでも土を掘り返し、堆肥を入れふかふかの状態にするのがこんなに重労働とは。一生懸命やっているつもりでも、ほんの表面、地面からすると「あらやだ、くすぐったいわねフフフ」という程度、なまっちょろく表面をひっかくほどしか耕せない。さらに悪いことには「今日は様子を見に来ただけなんだもんね」というスタンスだったのでスニーカーにスプリングコートなどという野良仕事のドレスコードにそぐわぬ服装で来てしまったのだが、せっかく道具を買ってみると早速使ってみたいという欲望に突き動かされ、じゃあちょっとだけね、と手をつけてしまったものだから、すぐに全身ドロドロ、汗ダラダラである。しかし、やり始めるとやはりある程度の結果を残したい。春は短い。わたしも仕事の都合もあるからして、やれる時になっておかねばならぬ。時期的にも待ったなし、だいたい、すでに今すぐにでもジャガイモを植え付けても遅いほどの季節なのだ。

3人して黙々と畑を耕す。3人いるのだが道具は二つしかないため、交代しながらやる。すると、気づけばいつものパターンになっている。つまりこうだ。わたしがあれこれ指図するのだが、結局手を動かしているのは夫と母だ。口先だけ達者の頭でっかち、体力もなければ気が利かない、しかも社交辞令は全部間に受け「いいから休んでて」などと言われようものなら言われるがままに無限に休憩を貪るタイプ、それがわたしだ。恥ずかしい限りで穴があったら入りたいが、きっとその穴でさえ人に掘ってもらうタイプなのだ、わたしという奴は。

そういうわけで夫と母の貢献により、2時間ほどでなんとなく全体に耕したので残りの作業は明日以降とする。どうだろうか、この労働の成果!

うん、ただの地面だね。相変わらず。

ちなみに、わたしたち夫婦は疲れたので帰りに外で夕食を済ませてしまったが、母は家に帰った後ご飯を待ちわびる父のために食事を用意したという。一体全体そんな重労働を老いた母にやらせるなんて、世の中どうなっているんだろうか。もとい、なんと親不孝な娘であろうか。(つづく)

その後長靴を買ってみたのだが、よく考えたら耕す時以外必要ないので、今後の出番は当分先になりそうである。(しかもこれちょっとでかすぎる)

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