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「断」

温度を忘れた布団の下
小刻みに震え続ける身体をどうにか支え、

二度と明ける筈のない夜が容赦なく
消え逝き、代わりに朝が
訪れる

壁に掛かった時計盤の上では
短針と長針が昨日と変わらず
廻り続けており、

僅かに部屋に差し込んだ光の
帯で浮かび上がった
私の輪郭は、
昨日とは決して重なることなく
陸に釣り上げられた魚のように喘いで
おり、

あの日

壁の時計は正確に
時を刻み続け、
私の背中に貼りついた時計は

壊れた。

―――詩集「胎動」より


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