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企業広報バイブル #32 忘れられない瞬間

🎵日米のリーディングカンパニーで企業広報を統括して気付けば28年。IT系、インターネット系、不動産、エンターテインメント企業、広告代理店、流通業界トップ企業広報アドバイザーまで色々。かなりの私見も交えて色々書いてみようと思い立ちました、、、🎵

何社も広報をやっていると、忘れがちになる社内への記事インパクト。もちろん、意図せぬ記事が出た時は、あちこちで物言いが入り、肩身も狭く、言い訳に時間を取られるのではある。が、こと、良いインパクト、に関してはなかなか気づかないことが(教えてくれないことも)多い。

とある会社での出来事である。
通常、大きく記事が出ると、社内関連部門からの反応とか、株主からの反応とか、ビジネスパートナーからの反応とかの、よかった、悪かった、あそこの一文、なんであーゆー書かれ方になったんだ、とか質問含め様々な声が広報に届きます。なるべく翌日は社内にいるように致します(笑)

もちろん、広報だってメジャーメディアの記事に関しては取材を受けたといえど事前確認などできはしないので、掲載されてから読んで、一憂一気するわけです。

取材を受けてくれたマネージメントからは、あーゆー意味じゃなかったのに、とかブーブー。上手くまとめてもらってうれしい、とニコニコ。俺の写真、他になかったのかと論外なクレーム。部下に仕事を任せて、物言い対応は私が一手に引き受けて朝から大忙しな訳です。はい、すべて、ニコニコ受け流します。出てしまったものを今更ねーーーー。
(だから、広報は心臓が強くなければ務まらない仕事かもしれないです。よく職業病は胃潰瘍とうつ病、とも言われますが、私は両方とも患ったことはございません)

あるとき、メジャービジネス誌で、アメリカ本社マネージメント取材、現場取材、日本の全マネージメント取材、取引先取材を絡めた数十ページに及ぶ大きな特集をしていただいた。それはそれは、、、ありがたい、たぶん、その会社の歴史上、初めての、そして今でも破られていない大特集であった。表紙も絡めて、派手にXXX社の真実!である。協力くださった日本側のマネージメント、社長は掲載記事を読むまで胃が痛かったと思う。「これで良い記事にならなきゃ俺は首になるかもしれないな」とまで捨て台詞を言ったお方もいた🤣

私の前任者は8年間、取材依頼を一切受けない方針を貫き、私が後任に入った。攻めます、と宣言して3ヶ月後の1発目であったため、社内のザワつきといったら、それはそれは半端なかった。

素晴らしい記事を掲載いただいた。本当に。。
数週間に及び日本、アメリカと担当いただいたメディアの特集担当チームには感謝しかない。やっと社内のぎゃーぎゃーも収束を見せた。ぼーっとコーヒー。

私が社内から不安で言いたい放題言われながら、大勢の関係者を説得に回りながら、様々準備しながら、メディアの皆さんとやりとりしながら、過ごした時間が全て報われたと感じた瞬間がその午後に訪れるのであった。

アシスタントの子が、「部長、あの雑誌、会社周辺のコンビニも本屋も全部売り切れなんです。私も買いたくって探してるんですよー」

「え?」

社員である。ちょうど、年末休みに入る直前の自社の大型特集。社員が奥さんや自分用に、また、帰省する時に親に、兄弟に友達に見せようと皆、数冊購入していた。8年間、自社の記事は掲載されることはなかったのだ(広報が受けなかったから)。なんとなく、XX社に勤めているといっても、それ、どこ?あの有名な遊園地のこと?とか様々誤解をされて寂しかったんだと思う。自分のやっているプロジェクトが載っている、自分の上司も、社長も、アメリカ本社も。当時の社員は契約も入れて800名、どれくらいの人が買ってくれたのかは知らねど、相当数の社員が一人3冊、5冊と購入したそうだ。

何よりも、社員のその行動が嬉しかった。本当に何よりも。彼らが読みたい、親親戚、友人にも読んで欲しいと思ってもらえる記事を、ここで仕事をするモチベーションが上がる記事をこれからも仕掛けて行きたいと、心から思った。広報ってこんな効果があるんだ、と疲れた頭で改めて、、思った日であった。あの日の感動は忘れず大切にしたい。


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