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執念で脱ぐ靴下

視界の隅で、子どもが見たことのない動きをしている。ん?と思ってよく見ると、履いている自分の靴下の先を口に咥えて、一生懸命引っ張って脱ごうとしている。
工程としては、指先の靴下を少し引っ張る。頭をぐっと足先に近づけて、靴下を咥える。そのまま頭をぐっと上へ持ち上げると、スポッと靴下が脱げる。右が完了したら、迷わず左へ取り掛かる。途中で咥えている靴下が口から外れて、後ろへ倒れそうになっても、体勢を整えてすぐに再度食らいつきにかかる。今度は歯でしっかり噛んでいる様子。流れ作業のように、なめらかな一連の動きに驚き、徐々に「靴下舐めると汚い」などという瑣末なことはどうでもよく思えてくる。今、この子は靴下を脱ぎたくて、そのための最善の方法を自力で編み出しているのだ。
両方の靴下が脱げたら立ち上がり、何食わぬ顔をして流れている音楽に合わせて腰を揺らしている。顔は、満面の笑顔だ。よくやった。

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