現代民話考[9] 不思議なタモの木
note書くの久しぶりだ~。
「現代民話考[9] 木霊・蛇」まだ読み終わってなくて、自分なりの総括も出来てないんだけど、
すごく素敵なお話が一つあったので、取り急ぎ紹介させてください。
青森県 北津軽郡というところでの、昭和33年頃のお話。
一面田んぼの水平線に、集落があり、その中央に、こんもり鎮守の森がある。その真ん中に、白い枯れた枝をのぞかせて、一段と高い木が見える。
村のお年寄りに、ご神木と呼ばれている「タモの木」である。
(タモの木ってあれかなあ…近所に街路樹としてたくさん植わってる、とても背の高いがっしりした木で、道に涼しく木陰を作ってくれています)
樹齢は500年、根本の周囲約7メートル、高さ33メートルと大変な老大木だった。タモの木特有のゴツゴツしたこぶだらけの太い枝は、長い年月で複雑に絡み合っていた。
しかし、昭和33年頃、春になっても目が吹かなかった。この木が急に枯れたのは、道路工事のせいかもしれない、と言う。
県道の舗装工事の時、根を相当切ってしまったとか。
ある日、枯れたタモの木に不思議なうわさが広まった。
夜、枯れた木のてっぺんに虹が出るというのだ。
最初はだれも信じなかったが、虹を見た人は少しずつ増えていった。月や星の出ていない真っ暗な静かな夜に、頂上辺りに時々輝くという。赤や緑や紫が一瞬現れて消えるのだとか。
村のお年寄りは、枯れてもまだ魂が残っている、あれはやっぱり神様の木だ、と言い合った。
しかし、枯れた木が倒れて民家を押しつぶす心配があったため、木は倒されることになった。
ある暑い日、三人の木こりが木を倒した。その轟音は隣村にも届いたほどだった。
驚いたことに、倒れた老木の頂上に、あざみ、たんぽぽ、ひるがお、おおまつよい草、まつばぼたん、その他名前も知らない花がたくさん咲いていたのだ。
何百年もたっているこの木が、台風などで枝が折れ、空洞ができ、そこへ鳥がやってきて花が咲いたのだろうか。
(蝶や虫たちも、たくさん来ただろうな…)
村人たちはこの不思議な光景に茫然と立ち尽くした。
霧の深い夜、遠くのライトが反射して、花の色を浮かび上がらせ、それが虹に見えたのかもしれない。
老木を伐ると祟る、とか、誰かが無理やり伐って、病気になったり怪我をしたり、亡くなったりして、やっぱり祟りだ、なんていう噂が広まったり…
今でいうフェイクと言うか、こじつけみたいなたぐいの話が、伝承として残ってしまっている感が否めない、そんな印象も少しありました。
木を守る青坊主とか、天狗やキジムナーの宿る木とか…面白い言い伝えもたくさんあるんだけど、前半は何となく、木に対する畏敬の念を失ったら懲らしめられる、という話が多かったです。
もの言えぬ木々を守るためには、そんないわくを語るのも仕方がないのかも知れないけど…
でも、このタモの木の話は、真実味があってよいな、と思ったのです。道路の工事で根を伐られて枯れてしまい、仕方なしに倒したら、黙って倒されて、見ると頭にいっぱい花を乗っけていた、なんて…
ラピュタの城にいそうな木ですね。ちょっとじわっと来た。
夜の虹のうわさも、ウソのようなホントのような、見てみたいなあ。
今、タモの木の跡地には、碑が立っているそうですが、それも見てみたいです。青森といえばねぶた祭り。中止になってしまって残念だけど、必ずまた祝える日がやって来るでしょう。
青い森 と書くんだもんね。いいお名前。
蛇の章も読まないと…ツチノコも。ツチノコは地面をころころ転がって進むから、ツチコロビ、とも呼ばれるらしいです。
他にどんな面白い話が待っているのか!?
日本にもエントがいたらよいのに…
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