見出し画像

新そば・そばの実雑炊・そばの実タブレ-三題噺

8月に岩手県八幡平(はちまんたい)の高原に行ってきました。目的は標高650mにあるそば畑を見に行くことでしたが、あいにくの雨と霧でそば畑は見えないものの、生産者自身が打ってくれた新そばを堪能しました。

画像1

新そばと言えば、秋になると、そば屋に「新そば」の張り紙を目にします。一般的には、この「秋そば」が新そばとして知られていますが、もうひとつ「夏そば」というのもあるのだそうです。そばは、播種(はしゅ:種まきのこと)と収穫時期によって、夏そばと秋そばに別れます。日本列島は南北に長いので、夏そばだと、九州は4月上旬から北海道では6月下旬から播種し、九州は6月中旬から北海道では8月中旬に収穫します。一方、秋そばでは、北海道は6月上旬から九州では9月上旬に播種し、北海道は9月中旬から九州では11月中旬から収穫とされています。八幡平でいただいたのは夏の新そばなのですが、秋そばの方が香り高く、味わいもふっくらと甘く、色も緑がかったものが多くて美しいのです。なので、新そばというのは、収穫したばかりの秋そばを指すのが普通になっています。

そばの生産者からは、「そばの実」の話も聞きました。以前は、枕の材料として「そば殻」を提供していたのですが、現在は行っていないそうです。そば殻とは、天日で乾燥させたソバの実の殻のこと。そう言えば、子どもの頃の枕はそば殻だったのを思い出しました。そば殻の枕は、通気性が良くて安眠出来るのですが、枕を洗えないので虫が湧きやすく、そばアレルギーの人は絶対に使えないというデメリットがあるのです。

今、注目を浴びているは「そばの実」です。メディアで取り上げられているので、ご存知の方も多いと思います。そばの実には、食物繊維やビタミンB1、B2などが豊富に含まれている上に、「レジスタントプロテイン(Resistantprotein)」という消化酵素による分解を受けにくい食物繊維のようなタンパク質が含まれていて、脂肪を吸着して体外に排出させることでダイエット効果があるそうです。

そばの実と聞いて思い出すのは、東京月島にある『由庵 矢もり』というそば屋で、2016年からミシュラン一つ星のそば懐石の店です。こちらでは、そばを石臼で挽くところから打ち上がりまで目の前で見ることができ、挽きたてのそばは確かに旨いのですが、個人的には「そばの実の雑炊」がビックリするほど感動してしまいました。それはもう絶品で、ご主人の矢守さんに「どんぶり一杯食べてみたい」とまで言ったくらいです。

そんな経緯もあってか、そば実をもう少し活用出来ないかと考えていて、思いついたのがフランスの「タブレ(taboulé)」です。フランスでは、硬質小麦加工品の「スムール:別名クスクス(semoule:couscous)」をサラダに使うのが人気で、タブレと呼ばれています。元々中近東のレバノン料理で、「ブルグル(Bulgur)」という挽き割り麦を使うのですが、スムールを使うとモロッコ風タブレとなるのです。これはそばの実も使えるのではないかと、銀座レカン6代目総料理長の高良康之さんにお願いし、そばの実のタブレを試作していただきました。八幡平産のそばの実を軽くローストし、「八幡平のタブレ」を完成させたのです。これからも、まだまだそばの実の可能性に挑戦したいと思いますが、皆さんもいかがでしょうか。

画像2

(2017.11.24公開)

この記事が参加している募集

ご当地グルメ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?