マガジンのカバー画像

ザ・料理人 ~堀 知佐子~

7
食べるということ。作るということ。 食べることは生きること。食べたもので体はつくられています。おいしい料理はこころまで健やかにします。
運営しているクリエイター

記事一覧

堀 知佐子 HORI Chisako

経歴 群馬県桐生市出身。染色業を営む家に生まれ、子どもの頃から母や祖母と一緒に食事を作る。神奈川県立栄養短大に進学し、栄養士の資格を取得。食品加工メーカーで勤務した後、群馬調理師専門学校の助手を経て、京都の京都調理師専門学校に講師として着任し、日本料理実習・栄養学などを担当する。その後、京料亭「菊乃井」の物販責任者となり、2008年に白金高輪にてアンチエイジングをコンセプトとしたレストラン「リール」を開業。「食べ物が身体を作る」をコンセプトにメニューを構成し、新しい形の

料理人を志すきっかけ

料理人を志すきっかけ 子供の頃から料理は身近で、煮干しの頭を取り、昆布の入った鍋に入れ、水を注ぎ、出汁を取る。残った煮干しの頭は猫のご飯に。これは小学生だった私の作業でした。染色業を営んでいた私の家は、母も工場に入ることが多かったので、よく食事作りの手伝いをしていました。中学生になった頃も、ご飯はつば釜で炊いていて、重たい木の蓋が乗った釜から噴き出る良い香りの記憶もしっかりあります。家の裏には畑があり、ジャガイモや長ねぎ、茄子、トマト、胡瓜、トウモロコシなどを作っていまし

食に対する思い

栄養士になりたかった母の理由は、「おいしいものを作ることができれば、皆を喜ばすことが出来るし、栄養や食品のことがわかれば、家族の健康を守ることが出来る」というものでした。ですから、家業で忙しいながらも、健康に関わる料理本などを購入して掲載されている料理を作ってくれたり、夜仕事が終わってから料理教室に通って、おいしいものを作る工夫をしてくれました。当時はまだ珍しいライ麦パンなども定期購入し、身体に良いとされる食べ物を母は選んでくれていたように思います。暑い夏には、工場は50

食材に対する思い

米を一粒たりともこぼさぬようにし、その水も道に撒き、栄養を無駄にせぬよう心掛けねば、食にかかわる資格なし。曹洞宗開祖道元のお言葉です。私の店では、食材から出るごみはほとんどありません。野菜や魚の皮はもちろん、三枚におろした魚の骨もそのままごみ箱に行くことはありません。食材すべての命を絶ってお料理というものに変えていっているのですから、もったいないことは一切許されないと思うのです。命というと畜肉ばかり取り上げられますが、魚も野菜も果物までも、その命を絶ち切って食材に代わるの

こだわりの調理器具

私が修行してきた日本料理の業界では、包丁にかなりの精神性を持ちます。平安時代には庖丁人という役職があり、立場は料理人の上とされていました。包丁式という神事もあり、これは庖丁人が庖丁と真魚箸を持ち、食材に一切手を触れずに捌いて奉納するというものです。後に、神事に関わる庖丁人の仕事を料理人がするようになりましたので、とりわけ日本料理の料理人は包丁に強い思い入れを持っています。和包丁が片刃なのも、食材の細胞を極力壊さぬように作られたからです。椀刺・割主烹従という言葉があるように

料理に込める思い

料理教室を長いことしているのですが、最近よく「自宅に醤油や味醂が無い」という話を耳にします。自宅で料理をしないというのではなく、麺つゆで代用しているようです。先日も、TVのロケで農家さんの作るお料理をいただきましたが、そこでも麺つゆで調味していました。どれもこれも甘辛味で旨味が強く、大根や里芋の本来の味わいを感じることはできませんでした。私は、調味料の味がしないような料理を作りたいと思っています。もちろん調味料は使用しますが、食材の持つ味以上の過分な味付けはしません。足ら

料理人として目指しているところ

料理人として目指しているところ 管理栄養士として企業の商品開発や調理指導などに従事しつつ、私自身もレストランを経営し、料理人として生業を立てております。日本料理が専門ではありますが、フランス料理のシェフである主人の手伝いなどをしながら、情報を得ています。中華料理やイタリア料理の業界でも勉強させていただける機会がありましたので、聞きかじりではありますが、多少の知識はあると自負しています。それぞれ勉強してきたことをまとめると、料理はボーダーレスということがわかりました。昆布と