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ごっくん青空ビール雲|1日を台無しにする誘惑

椎名誠のエッセイに『ごっくん青空ビール雲』という本があります。なんて誘惑多きタイトルでしょうか。

僕は暖かい季節になると、昼にビールを飲むのが好きなのですが、基本的には昼に酒を飲むことは自分のなかで禁止しています。

休日の昼間にビールを飲むことに生産性は一切なく、貴重である休日の時間をただただ費やし、特にその時の記憶も経験も残ることなく、飲み過ぎてしまった時には翌日に後悔まで引きずってしまうため、(飲んでいる瞬間を除けば)何ひとついいことがないと思っているからです。

しかし、椎名誠のエッセイがあるくらいなのだから、こういった生産性という観点から見れば1日を台無しにしているような行動にも、充分に価値を置いている人が多くいることがわかります。

自分は今30代の半ばで働き盛りの年代だからこそ、会社からはそこそこの仕事の役割ももらい、日々の責任を負うことで自己を肯定しているところなので、心のどこかで「成長をし続けなければいけない」といった資本主義的な精神が染み付いているのだと思います。

こういう世界観だと「ごっくん青空ビール雲」は、一日を台無しにしてしまう誘惑にしか映らないのですが、それを肯定できる価値観になるということこそが、人間としての成熟なのかもしれないと、時々そんなことを思ってしまいます。

それは、資本主義的な社会から一歩外に足を踏み出して、多角的な価値観で人生を捉えることができることを意味するのでしょう。そして何より余裕を持つことで人生を謳歌することに繋がりそうです。

最近は、毎朝株価をチェックしながらビジネス関連のニュースを読み漁り、出社してからは社員のマネジメントをしつつ、マーケティング関連のプロジェクトを推し進め、非効率な作業フローを見つけたらプログラムを書いて自動化し、仕事が終わったら出張先のカプセルホテルに夜遅くに泊まって寝るだけ、といった日々を過ごしています。楽しんで働いていますが、非常にビジネスライクな人生になってきている実感があります。

時にはこの流れを断ち切るように、青空を眺めながら昼間にビールをゴクリと飲んで、生産性を止めてみたほうがいいのかもしれません。

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