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「失敗を恐れるな」に疲れたあなたへ|「敗者のゲーム」に学ぶ賢い働き方

ビジネス書やネット記事、あるいは職場の上司から「失敗を恐れるな」という言葉を聞くことがあるかと思います。

成功への道はリスクを伴うので、仕事におけるチャレンジは失敗を恐れないポジティブなマインドが必要になってきます。

しかし、正論であることは理解しながらも、この言葉に疲れを感じたことはありませんか?

リスクを取りに行く積極的な精神には強いプレッシャーも伴います。そして、リスクを取ることで成功に繋げた人は少数だという事実も忘れてはいけません。

そんな「失敗を恐れるな」という言葉を安易に吹聴してよいものなのでしょうか。

そこで今回は「失敗を恐れるな」という前向きな言葉に疲れてしまった方に向けて、反対に「失敗しないこと」の大切さを説いた本を紹介しつつ、新しい価値観を提供したいと思います。

「失敗を恐れるな」という前向きな価値観の押し売りに疲れてしまった人はぜひ読んでみてください。

「敗者のゲーム」に学ぶ疲弊しない働き方

株式投資の古典的名著にチャールズ・エリスの『敗者のゲーム』という本があります。

この本は1980年代に書かれたインデックス投資についての本で、現在も世界的なベストセラーとして版を重ね続けています。

インデックス投資とは、市場全体の動きを表す代表的な指数に連動する成果を目指しているファンドに投資をする手法で、リスクが低く長期投資と相性が良いことが特徴です。

尚、長期投資を人生に活用する方法を紹介したことがあるので、もしよければ読んでみてください。

この『敗者のゲーム』は投資のハウツーばかりが書かれているわけではなく、インデックス投資の考え方を学ぶことができるため、幅広い学びを得ることができます。

ハウツーではなく「考え方」を学ぶことにより、資産運用だけではなく日常生活や仕事にも応用することができます。

そこで今回は、「失敗しないこと」の大切さを実感するために、会社員としての働き方に『敗者のゲーム』の理論を取り入れて考えてみます。

会社から無理難題を押し付けられて疲弊している人や、単調な仕事ばかりの毎日に嫌気が差してきている人にとっても、非常に有益で再現性が高い考え方をご紹介します。

『敗者のゲーム』とは何か|勝つことではなく負けないことが大切

本書の冒頭に「敗者のゲーム」と「勝者のゲーム」の違いについて、テニスのゲームを例にした非常にわかりやすい例が出てきます。

そこで書かれていることは、テニスには2種類のゲームがあり、一つはプロテニスプレイヤー同士のゲームでもう一つはプロではないアマチュアおよびその他大多数のゲームである、というものです。

プロテニスでは、長いラリーが繰り返された末に強力なウイニングショットで勝利が決まる様な、勝者の行動によってゲームの展開が左右されます。

一方でアマチュアのテニスでは素晴らしいショットなどはなかなか見られず、得点はほとんどが相手のミスによるものになります。

つまりアマチュアの試合の勝因は敗者のミスによってもたらされる「敗者のゲーム」である、というのが本書の主張です。

そして『敗者のゲーム』では資産運用もテニスゲームと同様で、プロではない投資家は「勝者のゲーム」に参加してはならず、「敗者のゲーム」でミスをしない運用を心がけるべきだと説いています。

つまり「負けないこと」が大切であり、もっと言えば「失敗しない」ことが何より大切だということです。

社会人になるとあらゆる場面で「失敗を恐れるな」と吹聴されて積極的な行動を促されますが、アメリカの古典的名著が「失敗しない」ことの大切さを説いています。これをどう捉えれば良いのでしょうか。

会社での仕事は「敗者のゲーム」なのか

アマチュアの株式投資において「失敗しないこと」が重要なことはわかりましたが、この考え方を日常の仕事に置き換えることはできるのでしょうか。

そのためには、会社で行っている日々の仕事が「敗者のゲーム」であるのかを考えてみましょう。もっと言えば、日々の業務が本当にプロフェッショナルな仕事であるのかを考えればわかりやすいかもしれません。

日本のビジネス環境では、欧米のように特定のスキルや業務に基づいた「ジョブ雇用」が浸透していないため、会社員はしばしば会社全体の一員として見られがちです。

そのため、日々の仕事が専門性を必要としない雑務ばかりになっていることも、多くの方が心当たりがあるのではないでしょうか。

つまり、日本のビジネス環境で会社員に求められていることも、プロのウイニングショットではなく、ミスなく相手のフィールドに打ち返す作業なのかもしれないのです。

会社員の失敗とは何か

そこで、より大切になってくるのは、会社員にとっての失敗とは何かを知ることです。

日頃の業務での些細なミスなどはここで言う失敗には当たらず、もっと誰でも意識すれば防ぐことができることで、勤怠不良やセキュリティ事故がこれにあたります。

勤怠不良は遅刻の頻発や当日の無断欠勤が、セキュリティ事故は鍵の紛失やメールの誤送信などがこれに当たります。

当たり前に思う人もいるかもしれませんが、実際に数多く発生しているからこそ、いつも話題に挙がっているのです。

これが「敗者のゲーム」で言うところのミスにあたるので、勤怠不良を起こさず、セキュリティ事故を起こさないことが会社員にとっては大切です。

失敗を恐れずに会社からの無理難題を解決することは難しくても、この二つを守ることなら誰にでも対策ができることではないでしょうか。

時間を味方につけて豊かな人生に繋げる

さて、会社員にとっても失敗をしないことが大切だと紹介しましたが、それを強みに変えるために必要な大前提があります。これは『敗者のゲーム』で書かれている主要なメッセージでもあります。

それは継続することです。

いわゆるプロは成果や報酬こそ大きいものですが、一部を除いてその成果を長期間発揮することができません。

ヘッジファンドマネージャーなどは短期的な利益を挙げるプロですが、解雇も多い環境で働いているので長期的な投資をすること自体が難しいのです。

個人に与えられている最大の利点は平等な時間があることです。プロにもアマチュアにも全員に平等な人生の時間が与えられています。

これを最大限に活用できることが「敗者のゲーム」の最大の利点だと言えるでしょう。

特別な才能やスキルがなくて自信を持てないという人も、ミスなく長年を穏やかに過ごすということなら可能ではないでしょうか。

そして、ここでは詳しく触れていませんが「敗者のゲーム」は株式投資および資産運用の本です。

「敗者のゲーム」によると長期間インデックス投資を継続することにより高確率で豊かな財産を築くことができると説かれています。

会社員とインデックス投資は「失敗しないこと」が大切である点が共通している相性の良い組み合わせです。

失敗を恐れずに成功するサクセスストーリーは多く存在しますが、実は「失敗しないこと」でも成功することはできる、ということも忘れないようにしましょう。

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