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現実と空想のフィルターバブル|洞窟の比喩に学ぶ

「フィルターバブル」という言葉があります。下記は総務省のホームページから引用した「フィルターバブル」の説明文です。

「フィルターバブル」とは、アルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示され、利用者の観点に合わない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立するという情報環境を指す。

出典:総務省『インターネット上での情報流通の特徴と言われているもの

現代を生きている人であれば誰もが思い当たる節がある現象だと思います。自分の考えや意志に反する価値観の情報は意識的にも、無意識にも排除してしまいがちです。

これによって個人が自分にとって耳障りの良い情報ばかりを取得するようになり、広い世界の多様な価値観を認めることが難しくなります。そして時にはその思想が過激化してしまい、問題が生じる要因にもなり得ます。

そのため、インターネットを利用する時は意識的にこれらのバイアスに影響を受けないよう、見たくない情報も日頃から得ておく必要があります。

プライベートブラウズを利用したり、DackDackGoなどのプライバシーを尊重するブラウザを利用したり、細かい対策はいくつか講じることはできますが、インターネットの情報取得は何も検索だけではなく、SNSのフォロー等も含まれるので、そうすると、共感できない趣味を持つ人や、政治的思想が異なる人をSNSで敢えてフォローしなければならず、非常に手間がかかってしまいます。

しかし、インターネットの情報取得は、企業からのターゲティング広告にうっかり釣られることなく、興味関心のある情報をしっかりと探しに行けば、現実世界では知ることができないような情報にたどり着くことができます。

例えば、個人のブログにはそのブロガーの様々な生活が綴られており、なかには少ない広告で趣味のように情報を公開しているものを読むこともできます。

ニッチな業界で働く会社員の仕事内容や職場の事情を綴ったブログもあれば、仕事を辞めて無職の生活をしている中年男性のブログもあります。

こういった人たちの生活や考え方というのは、会社員として働いて生活しているだけでは決して得ることができない情報です。

ひとつの会社に所属して単調な仕事を続け、価値観も共有するよう促され、週末に会社の上司や同僚と飲みに行って語らう一週間を過ごしたとしたら、均一な価値観のもと思想が形成されていってもおかしくありません。他の業界の仕事ぶりや無職の人の私生活や考え方に思いを馳せることなどないでしょう。

この様に考えてみると、日本の社会は「会社」をメインにしたムラ社会的な性質が非常に強いため、結果的に現実世界の方がフィルターバブルになってしまっている様にも思えてきます。

結局のところ、古代ギリシャのプラトンが「洞窟の比喩」で説いたように、自分が見ている世界が世界の全てではない、という謙虚な気持ちを持ち、より広い視点で世界を見るよう意識することが大切なのだと思います。

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