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残像にファンデーションを

 洋三はとうとうやってしまった。前から薄々、否、実は濃厚に自身の才能の枯渇に気付いていた。世紀末を舞台にした映画や漫画で、直ぐに殺られる悪役どもが、登場の時に必ず叫ぶ台詞「ヒャッハー」に負けない空元気で、毎月の連載を続けて来たが、先月とうとうやってしまったのである。コラボというサボリを。
 新鮮なネタが無くなり、といって引き籠りに近い洋三に、新ネタを提供してくれる様な人脈は無く、唯一、仲間として忙しい合間を割いて話を訊いてくれるビューティー芸人さんに、あたかももし良かったらという態で近付き、コラボしませんかと図々しく持ちかけ、ノーギャラで自分の仕事を押し付けたのである。しかも先月の評判が良く、これも洋三が仕掛けた遊びに違いないという思い込みを利用して、まんまと8月末の掲載分まで書いて戴ける事を取り付けたのだ。書き言葉より話し言葉に依存している現在の自分。そしてこの文のタイトルまで、尊敬するT先生の丸パクリなのである。誰かネタを!


〈掲載…2018年7月30日 週刊粧業〉

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