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お仕事を下さいと言う勇気

 スマホのギガが足りない。普段はスマホをいじらないタイプで、エゴサーチもせず、動画サイトも極力観ない習慣の御蔭か、ギガ不足の通知が来る事は無かったが、三か月前に干されて以来、矢鱈と検索したり動画を観たりが増えてしまった。そしてギガ不足を補うギャラが不足している為、イライラが増すという事態に陥っている。妻の真帆も最初は私の収入があるからとか、実家に頼もうかとか言ってくれていたのに。ここ数日は、家にいるなら取材でもしたらと言うようになった。気の所為かも知れないが、小学五年生の息子、世界でさえ宿題の戦力としてあてにされていない気がする。国語なのに……。

 仕事が無いというのは生活に支障が出るのは当然として、人間の尊厳さえ保て無くなるという事が身にしみていると、三カ月ぶりに担当のN本様からラインが入った。なんでも大好評だった漫画広告が、ギャラの面で折り合わず、来月の原稿に穴が空いてしまうかもという由々しき事態だと、で、一時間以内に書きなさいという内容。一秒後、二秒で書きますと即答した。


〈掲載…2019年6月10日 週刊粧業〉

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