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短歌初心者におすすめの歌集『オールアラウンドユー』木下龍也著(ナナロク社)

短歌を始めたばかりの人におすすめの歌集が『オールアラウンドユー』だ。歌人木下龍也の第三歌集である。この歌集は、その制作過程をテレビ番組「情熱大陸」が密着した。

木下龍也は1988年生まれで、まだ若い歌人だが雑誌『群像』の短歌の投稿コーナー「群像短歌部」で選者(掲載する短歌を選ぶ人)を務めるなど活躍していて、今最も注目されている歌人と言っても過言ではない。

この歌集は、カバーの色が5種類あるらしい。俺が持っているのは写真の薄緑のカバーだ。

短歌の初心者にこの歌集をおすすめする理由は3つある。

  1. 短歌の57577の定型に忠実な短歌が多いこと。

  2. 口語(話し言葉)で作られた短歌で、短歌に慣れていない人でも意味が分かりやすいこと。

  3. 単純に俺が好きな短歌が多いこと。

まず、定型に忠実な短歌が多い(字余り、字足らずがほとんどない)からこれから短歌を作っていこうとしている人にとって最高の教科書になると思う。

次に、文語(例、なり、たり、けりなど)ではなく、口語(話し言葉)で作られている点である。文語は、平安時代に使われていた言葉が基本になっているので読みなれていないと、難しく感じるかもしれない。ただ、口語にも文語にもそれぞれいい点があるから、文語の歌集もぜひ読んでみてほしい。短歌を作っていこうとしている人は、最終的には自分が好きな方で短歌を作っていけばいいと思う。

そして、3つめの理由は俺がこの歌人の短歌が好きだからである。

いくつか、この歌集に収められている短歌を紹介したい。

波ひとつひとつがぼくのつま先ではるかな旅を終えて崩れる

雪だったころつけられた足跡を忘れられないひとひらの水

まわれ右してかなしみを背景にすれば拍手のなかの幕開け

春なんて根こそぎあげるその代わりずっと消えない夏をください

人間へ まだ1割の力しか出してないけど? 消費税より

一輪のどうしても手に見える葉の二枚は残し西日に飾る

『オールアラウンドユー』木下龍也著(ナナロク社)
ペチュニアの花

最後に紹介した短歌を読んだ時、上の写真のペチュニアを思い出した。花を育てていると、人間みたいに思える時がたまにある。写真のペチュニアは夫婦か、恋人同士のように思えた。

『オールアラウンドユー』。心からおすすめできる歌集だ。

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