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花を供える


夕飯の支度の最中に、今日が4月17日だと気付いた。数年前に堕ろした子の命日。毎年必ず部屋の花瓶に花を供えた。これまで忘れたことなんてなかった。今から花を買いに行っては夕飯の支度が半端になる。食卓の花が萎れているから、新しいものを買ってきてほしいと夫に連絡した。承諾と、ティッシュのストックが残り少ないからそれも買って帰るという返信が来る。その過去は、夫には話していない。夕飯の並ぶ食卓に、誰に手向けられたか秘された花の彩りが添う光景を思う。そこで私は、あの人と向かい合って、何も言わずに食事をとる。息を深く吸う。

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