最後の旅行
離婚する前に最後の旅行をした。離島に一週間あそんだ。憎しみはないけれど終わりはくる。ある時、昔より逞しくなった彼の首を見て、不意に堰が切れた。彼も私の言葉を永く待っていたようだった。だから旅行は、いつか二人でいたことを美しく思い出すためだった。安らぎに満ちていた。終わりの日の朝、彼より先に目が覚めた。どこから流れてきたのだろう、バルコニーに黄色い風船があった。風は暖かく、海が光っていた。彼と一つの約束をした。いつか、あなたも私も一人きりになって、生きることにも憂いたなら、また一緒になろう。
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