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酒場の席を隔てる薄布の向こう、酔った女の二つの声、仕事が長くなるに従って客の顔を忘れることが増えたと不思議がる。しばらく馴染んだ客でも、それきりになると思い出せない。かと思えば、一度だけだった、なんでもないひとを夢に見ることさえある。その日の仕事を終えて朝の騒々しい街へと出る。一様に足を急がせる男たちの群れ。皆いつか肌を合わせた相手のようにも、誰ひとりと寝ていないようにも思われてくる。からだは軽くなる、まるで処女のように。

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