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プロのひと手間で驚くほど上品な仕上がり。 『鎌倉 鉢の木』の、冬の定番・風呂吹き大根

野菜を使ったシンプルな和食は、簡単そうに見えてちゃんと美味しく作るのは難しい。例えば冬の味覚、風呂吹き大根も、大根を出汁で炊いて味噌だれをかけるだけの料理だが、大根のえぐみが出たり味がぼんやりしたりと、いまいち味が決まりにくい料理の一つだ。
そこで今回は、精進料理・会席料理の老舗『鎌倉 鉢の木』で、実際に冬のコース料理などに出しているという、西京味噌仕立ての風呂吹き大根のレシピを教えてもらった。

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作り方を教えてくれたのは、料理人の塙省吾さん(写真右)と、辻直樹さん(写真左)。「昆布だしの取り方」や「大根の切り方」などの基礎的なことから、お店クオリティに仕上げるためのポイントまで、丁寧に伝授してもらった。これを読めば、和食初心者でも完璧な風呂吹き大根が作れるはずだ。

『鎌倉 鉢の木』の風呂吹き大根の作り方

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<材料(5人前)>
大根(上の方)・・・1/2本
だし昆布・・・10㎝程度
ゆず皮・・・適量
西京味噌・・・200g
信州味噌・・・25g
砂糖・・・30g
酒・・・50cc
みりん・・・50cc

<Point① 大根と味噌の選び方>
大根は、上の方が甘くて煮物向き。下の方は辛味が強いので、大根おろしなどに使うといい。また、古い大根は煮ると苦みが出ることがあるので、なるべく新鮮な大根を使おう。
味噌は、つぶタイプではなく濾しタイプを選びたい。鉢の木では、秋口は黒胡麻味噌仕立て、大根が甘くなる冬には西京味噌仕立てにすることが多いそう。なお、黒胡麻味噌ベースの風呂吹き大根のレシピは、鎌倉鉢の木公式HPで公開されている。

①昆布だしを取る

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鍋に水を入れ、だし昆布を入れる。(必要なだし汁の量は、大根を炊く鍋の大きさにもよるが、多めに作っておくといろいろな料理に活用できる)
お店ではそのまま一晩置くが、時間が無ければ写真のように昆布を小さめに切り断面を増やせば、1~2時間置くだけでも十分に味が出る。

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鍋を火に掛け、弱火で30分~1時間ほど、ゆっくり加熱する。温度計があれば、60~70℃を維持しよう。最後にひと煮立ちさせると、昆布の粘りが取れて扱いやすいだし汁ができる。
大根の下茹でにも1時間程度かかるので、だしを火にかけたら次の作業を進めるとスムーズだ。

<Point② 昆布だしの保存方法>
昆布だしは冷蔵庫で保管できるが、美味しさを保つためのコツがある。まず、昆布特有の生臭さが出てしまうので、だし昆布は取り除くこと。また、ゆっくり冷ますとだしの香りや味が飛んでしまうので、氷水を使って急冷するのがおすすめだ。

②大根を5㎝程度の輪切りにする

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大根を綺麗に洗い、へたを切り落としたら、皮付きのまま輪切りにする。

③大根の皮を厚めに剥く

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大根の断面を見ると、皮の内側にうっすら筋が見える。皮を厚めに剥いてこの部分を取り除くと、お店のようななめらかな口当たりが再現できるという。

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包丁で剥いていくと、筋の多い層と内側の白い部分は色が違っているのが分かる。

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余裕があれば、更に大根の角を面取りすると、煮崩れしにくく、美しい仕上がりになる。

<Point③とろけるような口当たりを実現するため、贅沢に皮を剥こう!>

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剥き終わりの様子。かなり仕上がりに差が出るので、思い切って厚めに剥こう。残った皮の部分は、細切りにして一晩部屋で干せば、切り干し大根としても使える。

④たっぷりの水で大根を下茹でする

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水から火にかけ、弱火で1時間ほどゆっくり茹でる。沸騰させすぎると、大根が膨張して煮崩れやすくなるので注意しよう。
なお、先ほど剥いた皮を一緒に茹でると、大根の味や香りが良く出る。また、生米をひとつかみ入れるか、米のとぎ汁で下茹ですると、白く綺麗な茹で上がりになる。

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竹串が通る固さになったら火を止め、しばらくそのまま置いて味や固さを落ち着かせる。
粗熱が取れたら水で軽く洗おう。

⑤昆布だしで大根を炊く

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昆布だしと下茹でした大根を鍋に入れ、火に掛ける。ここでも、沸かし過ぎないよう気を付けよう。お好みで追加のだし昆布を入れて炊くと、更に濃厚な昆布の香りが楽しめる。

⑥味噌2種類、砂糖、酒、みりんを混ぜる

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火にかける前に、味噌だれの材料をすべて鍋に入れ、泡立て器などで混ぜ合わせておくと失敗が無い。

<Point④信州味噌が味の決め手!>
西京味噌は、甘くて上品な味わいが特徴だが、それだけだと味がぼんやりと締まらない印象になりがちだ。『鎌倉 鉢の木』では、隠し味として信州味噌を入れることで、適度な塩気と味噌の香りを加えて味を引き締めている。

⑦味噌だれを弱火に掛け、なめらかになるまで練る。

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火にかけることで、砂糖が溶けて滑らかな仕上がりになる。水分が減ってくると撥ねやすいのでやけどには注意。焦げつかないよう常に混ぜながら、好みの固さになるまで練る。味見をして砂糖のざらつきが無くなればOK。水分が飛んで固くなり過ぎたら、水を少し少し加えてのばす。

⑧温まった大根の水気を切って皿に盛り付け、味噌だれと柚子を盛り付ける

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大根がだし汁の中で浮かんでいたら温まっている証拠。汁気が多いと味噌だれが薄まって味がぼんやりするので、キッチンペーパーなどでふき取ってから盛り付けよう。

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だしを含んだジューシーな大根に負けないよう、味噌だれはたっぷりと。西京味噌の優しい味わいにアクセントを添える柚子は、欠かせない存在だ。柚子は、皮の内側の白い部分は苦いので、黄色い所だけを薄く剥いて千切りにするか、おろし金でおろしてもいい。

<Point⑤味噌だれは、“自然に流す”のが綺麗な盛り付けのコツ>

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風呂吹き大根のビジュアルといえば、トロリと流れる味噌だれがポイント。スプーンで作為的に流そうとすると不自然な仕上がりになるので、スプーンの先を大根の中心に向け、自然に味噌を流すと綺麗。

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最後に、手のひらに器を軽くトンと落とせば、味噌だれの表面がなめらかになり、お店で出てくるような可愛らしい見た目が再現できる。
さあ、出来上がったら、熱々を頂こう!

いざ実食!

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食べる前に、この工芸品のような一皿をじっくり眺めよう。「大根をだしで炊いて味噌だれを掛けるだけ」などと軽く考えていた自分が恥ずかしくなる。柚子と味噌の香りに期待が高まったら、おもむろに箸を入れよう。

スッと箸の入る大根は、大根らしいしっかりした歯ざわりと、ホロっとほどける口どけの良さを両立した、絶妙な食感だ。甘くて香ばしい濃厚な味噌だれと柚子の爽やかな香りが初めにガツンとインパクトを残し、あとからジューシーな大根の甘みと、昆布だしの上品な香りがふんわりと感じられる。これぞ、風呂吹き大根の正解だ!
だしを取るところから始めると結構な時間が掛かるものの、弱火で茹でたり炊いたりしている間には他の作業もできるので、慣れれば手間はそれほど掛からない。普段使いにもおもてなしにもピッタリな風呂吹き大根は、冬の和食レパートリーにぜひ加えてほしい逸品だ。

取材・文=岡村朱万里 撮影=岡村武夫

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