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学校で学んだことを活用できる子に育てるために~急がば回れの学習法~

学校の教科書で学ぶことってなんだか現実世界とかけ離れているよな~と感じている人も多いはず。それは子どもも敏感に感じ取っている可能性があります。日本だけでなく、例えばアメリカでも、学校で学ぶことと現実世界で活用できる知識との距離は問題になっています。
 
では一体「活用できる知識」って何なのでしょう? これには研究データに基づいた定義があるのです。こんな重要なことでさえ、実は知る機会がなかった方が多いのではないでしょうか。「人がどのように学ぶのか」を、認知心理学、脳神経学などの研究データに基づいて解明してきたLearning Sciences(学習科学)という研究領域では、活用できる知識について様々なことが分かっているというのに、日本では知らない人が多いのは残念なことです。

多くの方がうすうす気づいていると思いますが、活用できる知識は箇条書きの暗記した知識ではありません。それはが自分の体験やこれまでの知識に新しい知識が結びついた体系だった知識であることは、「うまく学んだ人(専門家)」を研究することで明らかになっています。
例えば小学校算数で学習する単位だって「mm」「㎝」「㎞」「dL」「㎏」と箇条書きに暗記するしかないと思っている子どもたちも多いのですが、「m」が1000分の1、「c」が100分の1、「d」が10分の1」を表すと知っておけばそれぞれがつながり(体系化され)、「㏈(デシベル)」なんてみかけたら、きっと「ベル」という単位があるんだろうと想像することができます。「nm(ナノメートル)」という単位を見れば長さの単位として「ナノ」の意味を調べることでしょう。かなり単純化していますが、こういう知識が「活用できる知識」ということになります。学習の仕方も、問題集の選び方も、家庭でも声のかけ方も変わりますよね。

机上で詰め込む学習だけでなく、子どもの頃の実体験が重要だと言われますが、それは知識を体系化する上での礎となるからです。比喩的には「学ぶ土台を作る」とか「学ぶ土壌を作る」なんて言われるのがこれに当たるでしょう。「あの子は伸びしろがある」というのも、潜在能力だけでなく「知識を体系化するための要素をたくさん持っている」と言えそうです。もやもやと表現されてきたことがはっきししてきますね。実体験が大事だとはなんとなく感じているのに、「塾でどんどん詰め込む方法の方が効率がいい」と聞いた時に迷ってしまう方が自分なりの判断の軸を持つためには、「人がどのように学ぶのか」の理論を知っておくことはとても大切です。結果的に、今は机上で詰め込むことを選ぶとしてもです。「知識の体系化」がどのように起こるのかを知っていれば、普段の子どもへの声掛けも週末の過ごし方も変わってくるでしょう。そして、そういう大人と関わりながら学ぶ子どもは、活用できる知識を身に付けることでしょう。急がば回れです。

「人がどのように学ぶのか」を学ぶ勉強会は今回で5回目となります。
課題としている本は少し読みにくいものですが、みんなでわいわいと読み進めていきます。実際にお会いしたことがある方にお声掛けしていますが、お会いしたことがない方で勉強したい方はお問合せ下さい。zoomでの開催となります。(sansu.sugaku@gmail.com 中牟田宴子)

<次回日程>
2020年10月24日(土)10時~11時30分頃
*参加費は無料です

<予定しているトピック> *変更になる場合もあります
『授業を変える~認知心理学のさらなる挑戦~』 日本語版(翻訳)の第3章「転移」から(転移とは活用、応用というような意味の学習科学用語です)

・転移(活用、応用)しやすい知識の形について
・学校で学ぶ知識はなぜ転移させにくいのか、また家庭でできることはどのようなことか
・既有知識と知識の体系化、誤概念について

この勉強会では、皆さんの子育ての悩みや体験などと理論を結び付けながら、みんなで楽しく「人がどのように学ぶのか」について学びます。

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