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霧の中に住む。6月の十勝の暮らし

だんだんと観光シーズンも近づきつつある北海道。
寒さもやわらいだ6月の十勝、その日常風景を移住者の目線で切り取っておく。

霧の中に住む


都会にあって田舎にないものはたくさんある。
都会になくて田舎にあるものも、またある。
その一つが霧かも。

コンクリートに包まれた都会では、暮らしの中に霧が出ることはほぼなかったように思う。

十勝の田舎 中札内村に移住して
6月、わたしは霧の中で暮らしている。

6月初めの日曜日、雨上がりのドライブで、目前の畑からふあーって湯気のように立つ白い煙のようなもやに出会った。
霧だった。
ドライアイスに包まれたような世界を走る。
うわああああって思いながら運転
後部座席で寝てた子供をいったん家に下ろして
自転車で急いで戻るも、神の景色は終わってしまっていた。

以来、霧が出る。
あのときのように地面から煙立つのではなくて、もう一面に霧。
集落が霧の中に包まれる。

昔、「ミスト」っていう映画を観たことがあるのだが
あれみたいだねと夫と語る。

映画では、霧の中に魔物が出るのだったか、1人また1人と村人が減っていく、恐怖のストーリーだった。

確かに、濃い霧には魔物が潜んでいても分からない。いや、こちらは野生動物がマジで潜んでいるからこわいよね。

霧の夕方。庭の向こうがなにも見えない
霧の向こうから、「何か」がやって来そう。

最近は毎日朝夕こんなふうに白い。白い霧に包まれたしんとした集落を歩くとちょっとおそろしい心持ちになる。

霧の中、信号と街灯だけが浮かび上がる
夜も。


向こう側が見えないまま真っ直ぐとした道を歩くと、この世ではない世界を進んでいるかのよう。

霧は湿度の高い時に発生するらしい。更に、風が吹かず、ぐっと気温が下がるという条件のそろう、朝方夕方。
近隣では、トマムの雲海もこの時期が見どころというけど
早朝もしもこの村を上空から見下ろすことができたなら、いい雲海が見られるだろうか。

ふあーとした景色に包まれ過ごす季節は、朝夕異空間をさまよえる。

成長するものたち

こちらの道は、両サイド畑ということが多い。
よく通るマックスバリュまでの道も、両サイド畑。その畑の様子を見るのが楽しい。

こーんなに大きくなって!
と、1年ぶりとかに会ったよそのお子さんの成長っぷりに驚くことがあるが
まさにそんな感じで、

こーんなに大きくなって!
と、いう驚きが、数日単位である畑。

特に、5月の末〜6月に入ってからは成長に驚くことが多かった。

ちょっと前に見た時は、まだほぼ茶色の土に頭を出していただけの緑が
いつのまにか、わさわさとした野菜畑になっていたり。

ちょっと前に見た時は、緑の草むらっぽい畑だったのが、
びっしりと上に伸び突き刺さる一面の麦畑になっていたり。

なんなら、買い物の行きと帰りでも
あれ?ちょっとまた伸びた?
って思うくらい
日々ぐんぐんと伸びてくる、作物の力。

目まぐるしく変化を遂げていく畑を見るのは楽しい。

気づくとびっしり伸びていた麦の穂


畑の茶色が見えなくなるくらい、
わさわさ育ってきた作物(なんだろう)


わたしの住む中札内村は、「日本で最も美しい村連合」に加盟してる村だそうで
どの時期を切り取っても美しい自然が素敵なのだけれど、
住んで感じるその畑の変化の様子は、ただの観光では味わえない醍醐味だ。

家庭菜園では味わえない規模で
大規模がゆえにわかりやすく生命の力を見せてくれる。

5月27日の、庭の裏の畑。まだ、土しか見えない
6月13日の畑の様子
2週間ちょっとで、ここまで育った!

牧草の季節、到来

いまは牧草の刈り取りの季節でもあるとのことで、
刈られた畑と、転がるロールを見ることができた。

牧場をやっている大家さんが教えてくれた、牧草ロールの作り方
1.牧草はまず刈られて畑に広げる。
2.広げた後は、ひっくり返したりする。
3.最後にまとめてロールに巻いていく。

ドライブしていたら、刈り取った牧草をロールにしてるところに遭遇。その様子を間近に見ることができた。

機械が走りながら地面に広がった牧草を取り込むと、後ろに積まれた専用の器具が回転してクルクルクルクル、白いフィルムを巻いたかと思うと、コロン、と出来上がったロールが地面に転がされる。

いくつも巻かれたロールがちょこんと転がる牧草地はいかにも北海道らしい風景だ。

巻き終わったロールが転がる牧草地

こちらには趣のあるサイロのある牧場も見かけるが、このような白や黒の牧草ロールを積み上げているところも多い。

いまはサイロよりロールにするほうが増えているみたい、
フィルムはラップみたいなもので、ぴちっと密閉された牧草は中で発酵して美味しくなるらしい、
…というのも、今回知った。

なにも知らなかったわたしは、最初これがチーズの形に見えてしょうがなく、見かけるたび、ずっと「なんだろうなぁ〜」と思って眺めていた。ようやく疑問が解決。

牧草の刈り取りは年に3回ほどあるそうで、
次回のタイミングでも、またあの魔法のようなクルクル、コロンを見てみたいと思う。

近くの牧場のお宅では、牛の放牧もはじまっているそうだ。
牧草地へ牛たちが歩いてゆく様を動画で見せてもらったが、牛舎から小走りで出てくる牛たちは、とても嬉しそうだった。
散歩前に庭をかけまわる、かつて実家で飼っていた愛犬を思い出す。

放牧が始まると、ミルクの味も変わるのだという。当たり前のことだけれど、私たちが飲む牛乳は生きた牛から生み出され、その牛が食べるものからできている。
そうだよね。
頭ではわかっていてもつい忘れがちなその事実を、もう一度心に刻みたい。

草の味がするかな?そう思っていつもの牛乳を飲んでみると良いかもしれない。


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