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「あの大学って何してるの?」を概念マップで探索してみよう 【京都大学】

科学研究費データベース(KAKEN)から取得した研究概要のデータを使って、日本の科学技術研究がどのような分野に注力し、どのような方向に向かっているのかを探索するため、独自製作した概念地図でざっと読み解きます。

前回は東京大学を題材にしたので、今回は京都大学の科学技術研究をテーマとします。総合大学同士を見比べると大まかな分野は似通る傾向がありますが、それでも各大学の構図にはある程度の違いが見受けられます。

京都大学の研究概念マップ

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所感:細胞・遺伝子発現が最も活発な研究テーマ

細胞・遺伝子のエリアが最も研究数が多く、広がりも見られます。有名なiPS細胞については、マップの細胞/遺伝子のエリアのさらに左上側に位置していました。当然ながら細胞のエリアもそればかりやっているわけではなく、どちらかと言うと遺伝子発現(遺伝子情報が細胞の構造や機能として現れる工程?)の研究に注力してきた様子がうかがえます。

人の認知行動の解明に期待

これは東京大学でも見られた傾向ですが、脳神経分野の研究から社会科学分野の研究まで、陸続きで分野横断的な研究がみられます。京都大学は、その間に明確に「認知行動」の研究が介在していて、ここは脳の認知機能や神経系の働きと関連して、自閉症、発達障害、認知行動療法に関する研究が織り混ざっています。高齢者医療の研究も近い位置にあるので、認知症や高齢者介護に対する研究とも密接に繋がる気がします。この認知行動の研究分野は社会ニーズの観点でかなり重要なポイントと言えそうですね。

地震・災害のモデル化と予測に注力している

マップ右側をみると、ナノ材料やエネルギー分野、光・量子分野、そして地震予測モデルといったエリアが一連の連なりを形成しています。その中でも地震関連の箇所はピンポイントで注力しているように見えますね。このあたりは地震だけでなく気候災害の研究も含まれていて、共通項として災害の観測・モデル化・予測を目指している様子。この分野も京都大学の一つの注力ポイントと言えそうです。

今後:基礎研究が地震や気候災害のモデル化に繋がるか

右下の箇所はアルゴリズムや数理系の基礎研究が中心で、抽象的な話ではありますが、地震予測モデルの箇所ともう少しで繋がりそうな、若干の隔たりがあるように見えます。地震の発生メカニズムの解明に繋がりそうな理論・アルゴリズムの構築が今後増えてくるのか、とてもチャレンジングな話だとは思いますが、注目していきたいところです。

今回はKAKENに登録されている研究数が東京大学に次いで2番目に多い、京都大学の研究の全体像を見ました。やはり研究の数に加えて網羅性があり、分野横断的な研究もあり、今後も世の中に役立つ研究を発信してくれそうな期待感があります。一般にはノーベル賞の効果もあってiPS細胞が非常に有名ですが、それ以外の注目分野も見えてきたと思うので、特に今回挙げた認知行動や災害予測モデルといった研究には着目していきたいと思います。

出典・免責事項

当記事の情報は、KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)( https://kaken.nii.ac.jp/ )をもとに筆者が独自に加工し、考察した内容となります。正しく公正な情報を提供するように努めてはおりますが、必ずしも正確性を保証するものではありません。


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